ちょうどLoveを観ているときに読んでいたBad Feministで、女性キャラクターのlikabilityについて語られた章Not Here to Make Friendsに目が止まった。ここで例に挙げられている悪女は『ヤング=アダルト』のメイビスや『ゴーン・ガール』のエイミーで、プロにもアマにもレビューで「こいつは多分アル中」とか「精神病」とか書かれた。愛想を振りまかず、人から愛される努力をしない女性はビョーキとレッテル貼りされることでしか消化されず、人間としてのパーソナリティは無視される。これがunlikableな男性キャラクターではまた話が別で、彼らは反社会的な行動を取っているにもかかわらず「クレイジーだけどそこが魅力的な」「興味を惹く」アンチヒーローとして美化され、「ビョーキ」の一言で片付けられる代わりにその心の闇を分析される(『ライ麦畑』のホールデンとか)。フィクションの世界においても「女は愛されてナンボ」から自由にはなれないのか…。
銀行のテラー(窓口係)は店舗数が多い上に入れ替わりが激しいので常に求人している。ポジションは正式にはCustomer Service Representative(CSR)などと呼ばれることが多い。採用過程を通じてとにかくcustomer service, sales, そしてcash handling and cash balancing経験をゴリ推しすること。コンビニやファストフードでバイトしたことあるよね?「いらっしゃいませ」「ポテトも一緒にいかがですか」と言わされたことあるよね?シフト終わりにレジ上げをしたことあるよね?それは立派なスキルです。
というわけで直接支店で面接することになったのは二社。しかも二日連続。電話面接から数日あったんですが緊張レベルはマックスに達し地獄のようだった。実際の面接ではカンペ丸読みというわけにはいかないので仕方なくカンペ丸暗記作戦に切り替える。面接でぺらぺらとアドリブ加えてフリートークするほどの英語力なんかないよ!というか普段かなりsarcasticな話し方してるんだなと実感した。本音を話したら間違いなく落ちる。カンペ片手に朝から晩まで壁に向かって話し続けた。I have 15 years of experience in customer service, I have 15 years of experience in customer service, I have 15 years of experience in customer service....こんな簡単なことが緊張するとどうしても出てこない。口がうまく回らず言葉に詰まってしまう。WorkBCのワークショップで教わったように、「まるで自分の電話番号を言うようにスラスラと話せるまで何度でも練習」した。壊れたレコードプレイヤーのように話し続ける。話せば話すほどゲシュタルト崩壊というか、もう何がなんだかわからなくなって本当に苦しく惨めな時間であった…。なんていうか、わたしはネイティブスピーカーではないし、いくら勉強したって一生ネイティブスピーカーにはなれないんだなと改めて実感した。銀行テラーはとくにトークスキルが求められる仕事で、ネイティブと同じ土俵で戦うのはほとんど不可能のように見えた。でも、やるんだよ!絶対にこのチャンスを無駄にしたくない。
面接直前に偶然見つけたこの動画→ Amy Cuddy: Your body language may shape who you are
前半は実践的とはいえ「まあそうだろうね」といった内容で関心しなかったのだが、終盤のI'm not supposed to be here,とたたみかけるところで思わず泣いたね…。fake it until you become it. 新しいことに挑戦するのにビビってる人に是非見てほしいです。昔から「わたしはこういうタイプじゃない。向いてないから仕方ない」と何事もやる前から諦めがちだったけど、カナダに来てからは「できないんじゃない。今はまだ慣れてないから下手なだけ」と考えるようにしている。今回の就活だって最初は求人を眺めてる時点で心が折れかけたけど、そのうち慣れると信じて努力し続けた結果最終面接までたどり着くことができた。わたしにできないことなんかない。今までだって、なんとかやってきたじゃないか。
面接当日はまだ髪がブルーのままだったので(採用決まってから結局染めた)ebayで買った黒髪のウィッグを被って出陣。フォーマル服はNPO団体Dress for Successが無償で提供してくれました。この話はまた詳しく書こう。
そんなわけで、全然考えたこともなかった銀行の仕事に興味を持ったのはこれがきっかけだった。銀行って日本だとすごい優秀な人しかなれない印象だけど、カナダ人に聞くとそんなことはないと言う。とくに通称テラー、正式名称Customer Service Representativeなどと呼ばれる窓口業務は大学生や新卒生(こちらでは職歴の少ない新卒はむしろデメリットなので最初の就職に苦労する)が短期でやるのに人気があるそうだ。テラーはなるのも業務自体も簡単ではあるけれど、履歴書に書けばさすがに印象がいいので金融以外に転職予定でも最初の踏み石に最適。この業界でずっと生きていく覚悟ならもっと好都合、銀行はほぼ内部からしか人を採らないので一度下っ端テラーで入ってしまえば別部署に昇進するスピードが早いらしい。WorkBC(職安)の人に相談してみたら「それだ!それでいこう キラーン」と大賛成の様子だった。
外国での就活でマイノリティであることは当たり前に重大なハンデになる。その傾向は中小企業に顕著で、アジア人の名前というだけで履歴書を読んでももらえない。カナダ生まれ、カナダ育ちのネイティブスピーカーでアジア人の名前の人だっているのに…。バンクーバーに限って言えば中国人は有利だけど、日本人なんか英語下手なの有名だし全然相手にされない。しかし!大企業、とくにインターナショナルに業務展開する銀行なんかは移民や障害者をどんどん雇って「いい会社」アピールしたいから、逆にマイノリティであることが有利になる。ホームページの各支店の案内見ると対応言語が書いてあって、移民の多いカナダではそりゃ対応言語が多いほうがビジネスのチャンスは広がる。わたしのおかげで日本人の大金持ちが顧客になってくれるかもしれないしね。日系企業以外で日本人であること、日本語が話せることがセールスポイントになるとは思いもしなかった。でもそれは、レジュメとカバーレターに誤字脱字が一つもないこと前提ね。ちょっとでも間違ってたら「これだから外人は」と思われて終わり。とくに銀行はattention to details(些細な間違いも絶対に見逃さない能力)を重視されるから、単語間のスペースが一個足りないだけでアウト。multi-taskとmulitask、BCとB.C.なんかのconsistencyもね。こういうのは自分では気づかないので最低でも第三者数名、できればプロに見てもらいましょう。このブログは趣味でやってるので誤字脱字あっても勘弁してくれ笑。
なんの仕事かというと、なんと…銀行!The Big Fiveと呼ばれるカナダで一番強い5大銀行の中のひとつで働くことになった。ファストフードの奴隷で泥水を飲んだ5年間からの華麗なる転身。快挙です!この業界は最初は全員窓口業務から始めて→才能があればそこからぐんぐん昇進→金融界で天下を取る、という流れらしい。基本的にオフィスのドレスコードがゆるいバンクーバーですが、さすがに銀行窓口はコンサバで青い髪はたぶん認められないということで、ebayで買った人毛のカツラをとりあえず今はかぶってます。しばらくはおとなしくしておいてそのうちファサっとカツラを外して正体を明かそうかと思ってる…。
て、端折りすぎだよね笑。おちつけ!
前の仕事を辞めてから2ヶ月間努力、努力、努力の毎日で全く心の休まることがない状態でした。「job hunting is a full time job(就活はそれ自体がフルタイムの仕事である)」と俗に言うが、本当にその通り。仕事してないんだから暇やろとばかりに職安の人がどんどんワークショップやら面談をブっこんでくるし(ありがたい話だ)、外に出るとお金使っちゃうから習い事のヨガの時間以外は一切外出できず気持ちの逃げ場がないし、少しでも何もしない時間があると焦るので延々と求人サイトをたぐったりレジュメを見直したり。ごはんを食べたり酒を飲んでいる時は「仕事もしてないくせに」と罪悪感を感じた(でも酒はやめない笑)。仕事って、しててもしてなくても苦労するんだから参るよなあ。