バンクーバー在住6年目、世界を股にかけるフリーターちひろうさぎの日記と映画レビュー。

2014/02/25

Cinema Review: Hannah Arendt

The Act of Killingを観てからというものの<悪の凡庸さ>って何だっけ?とずっと考えている。多少資料を持っていたはずだが日本に置いてきた(もう捨てられたかも泣)。電子書籍なんか邪道じゃいと思っていたけどこういう時便利なのね。しかし現段階での日本語書籍のラインナップを見てやっぱり購入には至らない。ゴミが減ってよかったねとは思う。

アーレントの日本語訳がこちらで手に入るわけもなく、当然電子書籍にもなってなかったのでこれを機に英語で読んでみることにした(オリジナル版が英語だと知らなかった。ドイツ語かと思った)。<悪の凡庸さ>は『イェルサレムのアイヒマン―悪の陳腐さについての報告』に詳しいと思うが、日本語で少し読んだことのある『全体主義の起源』の方が単純におもしろそうなのでこっちに。翻訳だと一冊5000円の三巻組で学生時代の自分には手が届かなかったけど、ペーパーバック版はぎゅっと一冊にまとまってお値段24ドルとコンパクト。タイトルはそのままThe Origins of Totalitarianism。第三章Totalitarianismから読み始めた。(今のところ)アーレントの議論はやや抽象的だが、そのぶん文章が美しくてかっこよくてウットリする。

携帯カメラで撮ったらなぜか反転してる

少し前(だいぶ前)に急に日本でドラッカーやサンデルが流行ったけど、アーレントやオルテガの<大衆>の概念なんてそれこそ中二病炸裂で超パンクなのにどうして流行らないんだろう(べつに流行って欲しいわけではないが)。アーレントが映画になったのでこれはブーム来るか?と思ったんだけどなー。


Hannah Arendt (2012) 『ハンナ・アーレント』 日本公開中 公式サイト imdb 予告編


ハンナ・アーレントはナチス時代のドイツに生まれたユダヤ人で、フランスへ逃れ、その後アメリカに亡命した思想家。最終的に市民権を獲得するまで18年間も無国籍状態にあったという。ドイツの大学ではハイデガーに師事し、禁断の愛人関係になるが、そのハイデガーはナチス党に入党…と、そもそも映画のようにドラマティックに生きた人だ。この映画は1963年、彼女がニューヨーカー誌に寄稿したアイヒマン裁判についてのリポートが論争を引き起こした事件に焦点を当てている。

アドルフ・アイヒマンはナチス親衛隊のメンバーで、ユダヤ人虐殺について重要な決定権を持った人物だ。戦後は戦犯として指名手配され、アルゼンチンで身柄を拘束される。アーレントは彼の裁判の取材を切望しイスラエルへと向かった。


法廷には原告の生還者と600万人の失われた魂。憎悪の集中砲火にさらされるアイヒマンは裁判中に暗殺されないよう防弾ガラスの小部屋の中にいる。彼の供述を聞いたアーレントは衝撃を受ける。アイヒマンは悪魔ではなく、ただ命令に従って仕事をこなす小役人だったのだ。彼が死の宣告を下した幾多の命は彼にとっては紙の上の数字でしかない。きっとサラリーマンよろしく上司から依頼を受け、指定された締め切りに間に合わせたりしたのだろう。20世紀は大衆の時代だ。合理化、システム化された巨大な官僚組織の中で自分の仕事をこなすだけの個人はそれがめぐりめぐって強大な悪に加担していることに気づかない。当然悪意もない。というよりは思考も想像もしていないのだ。最もおそろしい悪とは思考しない普通の人間が行う、悪意のない悪―彼女はこれを<悪の凡庸さ>と呼び、現代社会の病理を告発した。

この記事が発表されるやいなや彼女は激しい非難を浴びた。絶対的な悪であると信じられていたアイヒマンを「(あなたたちと同じ)普通の人」と表現したことは彼の擁護と解釈され、そして最も論争を呼んだのはユダヤ人組織がナチスに協力したという事実を暴いた部分だった。ヒステリックで流されやすいのもまた大衆の特徴である(要するに大衆はバカなのだ)。アーレントは「記事を読んでもいない人間が批判しているんだ」と毅然とした態度でいるが、教養ある親友らすら手のひらを返したように離れていき、講義を持っていた大学からも辞職を促される。Thinking is a lonely business―ハイデガーの言葉を思い出すアーレント。

ハイデガーとのエピソードは断片的にフラッシュバックするがなんだかぎこちなく映画に馴染んでいなかった。20世紀を代表する思想家アーレントの人間としてのチャーミングさを強調したかったのかもしれないが夫のブリュッヒャーとやたらイチャついているのはただ居心地が悪いだけ。「考えることの強さ、勇敢さ、痛み」に結論を持っていくならヌルいヒューマンドラマよりも思考することのスリルを見せるべき。アーレントという人が面白いのであって映画はちっとも面白くなかった。主演のバルバラ・スコヴァの演技がよかっただけに残念。

アーレント本人。才色兼備でチェーンスモーカー。

2014/02/16

Cinema Review: The Act of Killing

尊敬する柳下毅一郎さんが2013年のベストに選んでいたThe Act of KillingがこちらではもうDVDになったので鑑賞。日本では昨年10月の山形国際ドキュメンタリー映画祭(行きたかったなー!)で『殺人という行為』の邦題で上映されていて、今年4月に『アクト・オブ・キリング』として一般公開されるようです。

劇中のこの巨大な魚はインドネシアのトバ湖の近くにある元レストランだった建物で、
治安悪化による観光産業衰退の影響で今は廃墟なんだって

The Act of Killing(2012)『アクト・オブ・キリング』 2014年4月 日本公開予定 公式サイト imdb 予告編


1965年、インドネシアでクーデターが起こった。軍の独裁支配の下、組合メンバー、識者、中国人はまとめて「共産主義者」と呼ばれ処刑された。準軍事的集団やギャングによる組織的大量虐殺の被害者は100万人に及ぶという。映画は冒頭にこんな言葉を引用する。「殺人は禁じられている。ゆえに殺人を犯したものは罰を受ける。ただしトランペットの音色に合わせて大量の人間を殺した場合を除いて。―ヴォルテール」そう、インドネシアの殺人者たちは罰せられるどころか国のために戦った英雄として今なお称えられているのだ。彼らには罪の意識が全くないのだろうか?その手でたくさんの命を奪った当事者に当時の再現映像を作らせるという手法でもって、人を殺すとは何か、正義とは何か、さらに演じるとは何かをあぶりだす画期的なドキュメンタリー。タイトルのActは行為とも演技とも訳される。(日本公開タイトル、原題に戻して正解だね。)


「最初は殴り殺してたんだけど血を片付けるのが面倒だろ?ひどい匂いだし。だからこうしてワイヤーで首を絞めるほうがはかどるんだ」 1000人は殺したと豪語するアンワー爺さんは虐殺の現場を嬉々として紹介する。

あるものは言う。「戦犯の定義を決めるのは勝者だ。俺は勝者だから俺が正義を決める。」善悪の基準はうつろいやすいもので、ある文脈―一番簡単な例でいえば軍の中では殺人は正義だ。悪は善と同じように人間に備わった普遍的な性質だが、誰の心にも人を殺せる才能が眠っているとしたらなんとおそろしいことだろう。

映画に登場する数々の悪人の中で最も醜悪だと思ったのは反共産主義運動に加担した新聞社の男だ。ヘイトスピーチを行い、また社のオフィスで人々を尋問しては「有罪」としてギャングや軍に引き渡していた。「俺は人殺しなんかしねえよ。する必要がないだろう。俺はウィンクする、後の始末はあいつらがやるさ」彼の罪悪感を麻痺させているのは「自分はそのとき正しいと思った事、やるべき事をやっただけ」という「仕事」の意識だ。これがハンナ・アーレントの言う「悪の凡庸さ」だろう。直接手を汚していないから悪くない。命令だから殺した。人殺しが人道に背くことは誰でも知っている。罪の転嫁のバトン競争で世界は回り、一部の人間だけが運悪く罰を受ける。

「映画の後なんか、歌って踊って、そんなテンションのままハッピーに殺しをやったもんさ。」チンピラ業の一環として映画のチケットダフ屋もやっていたアンワーはなかなかのシネフィルで、マーロン・ブランドやアル・パチーノ、ジョン・ウェインをフィーチャーしたギャング映画に影響を受けたという(ワイヤーで絞殺する方法も映画にインスパイアされたらしい)。撮影にはノリノリだ。

あこがれのクレーン撮影

「ちょっと小道具を用意したよ。
やっぱギャングってのはこう、帽子を被ってるもんだろう」

被害者側も加害者側もおそらく生まれて初めてカメラの前で演技するであろう人々が、あれ…これはシャレにならないぞという空気を即席で作り出してしまうのには驚いた。筋書きのないストリートの寸劇に子供は泣き叫び、大人は発狂し、役からこちらの世界に帰って来られない人間は放心状態である。たとえ演技(act)であっても行為(act)は感情を呼び覚ます。演じる役が変われば主従関係は逆転する。

アンワーは小さく打ち明けていた。「悪い夢を見るんだ。」意識下に潜んでいた不穏な黒いシミは撮影が進むにつれ徐々に彼の心を蝕んでいく。カメラは彼の目線ひとつ逃がさず記録する。映画は彼を追い詰める。「共産主義者」を演じさせるのだ。彼そっくりの人形の首を切るとにせの血が溢れる。現実では仲間であるギャングに拷問され、目隠しをされ、首にワイヤーをかけられる。カットの声がかかっても彼はもう二度と以前の彼には戻れない。「こわかった。拷問された犠牲者の気持ちがわかったよ」「いいえ、その人たちはあなたよりもっともっと怯えていたはずですよ。あなたはこれがただの映画だと知っていますよね。あなたが殺した人たちは自分が殺されると知っていたんですよ」監督は彼が泣き出すのを待っているかのようだ。そして改めて彼を虐殺の現場に連れて行き、犯した罪を詳細に再現するよう求める。激しい眩暈に嗚咽し、立ち上がることもできない彼をカメラは追い続ける。なんと悪趣味なサディズムだろう!「人がなぜナチの映画を観るかわかるか?サディズムさ。ナチの映画よりサディスティックなものを作ろう、作れるさ。だってこれはフィクションじゃないんだ。俺は本当に人を殺したんだ」冒頭でこう語ったのはアンワー自身である。善悪や主従といった一見磐石に見える基準はいとも簡単に転覆するものなのだ。

Happy Singletine Day

2012年はカナダに来たばかりで知り合いがいなくて、2013年は一時帰国で東京にいたので、こちらで過ごすバレンタインはほぼ初めてでした。13日がたまたま休みだったので菓子作り。シェアハウスに道具や材料は一式あるから板チョコだけ買ってきた。 しゃらららー素敵にキッス、しゃらららー素敵にキッス、しゃらららー以下略

これを、

こうして、

こう!

でーん!ガトーショコラだかブラウニーだかそういうやつ!不器用なりにがんばったですよ。恥ずかしいので「ご自由にどうぞ」と書いてキッチンに放置しておいたら一瞬で売り切れたのでよかったよかった。男の子って甘いものが好きなのねー(現在シェアハウスは男5:女2の7人体制で、女子ひとりは滅多に帰らないので実質わたしが紅一点)。チョコが焼けるにおいだけで頭が痛くなっちゃったよ。

バレンタインは大好きで日本にいるときは毎年手づくりしてました。自分では作れないっていうか、作れるとは思わなかったので友達やバイト先に手伝ってもらって。高校生の時は保健室の先生や家庭科の先生に冷蔵庫借りたりしてねー。チョコを渡す好きな人のことはもうほとんどどうでもよくて、女の子同士キャーキャー盛り上がるのが楽しいの。思い出いっぱい。みんな元気でいるかしら。

日本では女性が男性にチョコを渡す日ですが、カナダのバレンタインは男性が意中の相手をデートに誘う日で、町中に花束を持った人が見られました。わたしはバイトだったんですが、なんと!


よく来るお客さん(おじいちゃん)がバラの花をくれました!うれひーーーー!義理チョコもらう男の子ってこんな気持ちなのか。帰り道、これ見よがしに頭上にブンブン掲げてダウンタウンを行進。

FBのポストを見たり人に聞いて気づいたんだけどバレンタインに一人ぼっちというのはかなり悲惨という風潮らしく、シングルの人はお見合いイベントに出かけたり友達と無理矢理デートしたり必死のようです。わたしは前週に男友達から「金曜遊ばない?」と誘われていて、そのときはバレンタインだと気づかなかくて気軽に「ええよーヒマだしー」と返事していたのでした。何か勘違いさせちゃったら悪いなーと思いつつ一応おめかしして出かける…。素敵なスペイン料理屋に連れて行ってもらって、バンクーバーで一番美味しいらしいサングリアを飲んだんだけどまさかの写真撮り忘れ!というか人と食事中に携帯を出すのはみっともないと思っているのだ。美味しいもの食べてしあわせ。美味しいもの食べた時の英語でのリアクションを勉強したい。ンーーー!じゃないよ、ンーーーー!じゃ。

二軒目はニコママの元カレやこの日のデートのお相手ミゲルのパパが創業にかかわった近所の行きつけバーへ。世界狭い!

ガチ飲みバレンタイン(ショット酒追加)

ミゲっち

フラメンコショー

ミゲルが「デート!ってかんじに身構えて欲しくないからお花はないよ」と言って本当にお花をくれなかったのでけっこうムッとしたわたし笑。そこ義理花はないんかい…。まあこれからも友達としてカラっとした関係でやっていくにはこれくらいがちょうどいいのかもね。最初は猛烈に口説かれてたんだけど「ニコが!大好き!」としつこく強調していたら諦めてくれたようで今は親友です。芸人のようにおもしろくて一緒にいると笑いが止まらない人。ニコも「彼は信用していい人」と言っていた。ミゲルは「ルームメイトはちいに対してちょっと過保護すぎる」と言うけど、わたしはずっと彼らに守られていたいと思う。出かける前に身支度していたらニコが「え?おめかししてどこ行くの?」と焦りだしたので「えーとシングルが集まるパーティっていうかなんていうか」となぜか瞬間的にプチ嘘をついてしまった。ちなみに彼はダンサー仲間とお食事に出かけたらしい。お互い午前1時くらいには帰宅して「む、ちゃんと一人で帰ってきたな」と探り合う金曜の夜。くしゃみの音まで聞こえる、誰より近くて遠い君。

2014/02/09

続・ワーホリ仕事探しの方法

bloggerのアクセス解析を見ると「ワーホリ 仕事探し」「ワーホリ レジュメ」などで検索してこのブログにたどり着いている人がすごく多くて、また2年前に書いたワーホリ 仕事探しの方法 がこれまでずっと一番人気の記事でもあるので、アップデートしてみようと思います。自己流でバイト探してものすごく苦労した体験談(失敗談)と個人的な意見を書くだけなので、あくまで参考程度に…。ちなみにわたしはBC州バンクーバー、ダウンタウン付近を拠点に活動しています。カナダの他のエリアや別の国では勝手が違うかもしれません。

ワーホリでも目的やバックグラウンドはさまざまなので簡単に自己紹介しておくと、わたしは日本で長年フリーターをしていて、主に飲食店でバイトなんかしていました。なので資格も正規雇用の職歴も全然ないです。キャリア的なゴールはよくわからないままなんとなくバンクーバーに来てみて、せっかくなので新しいことをしてみようと前から興味のあったアパレル販売に絞ってバイトを探していたところ、思いがけず(今思えば当たり前だ)手こずりすっかり無一文に。本当にお金がなさすぎたのでとにかく今できることをやるしかない、と諦めて飲食店でバイトを探したのでした。
というわけで以下の話は専門職やオフィスでの仕事を探している人には役立たないと思います。

仕事の探し方

バンクーバーはなにげに観光地で、夏の繁忙期はどこも猫の手も借りたい忙しさなのですが、飲食店などもう冬季は閉めたら?っていうほど暇です。もともといるバイトもシフトを削られるくらいだから冬(10月~3月)に職探しをするのは困難だと思われます。4月くらいになるとどのお店もだんだん忙しくなってきて「そろそろ夏に向けてスタッフ増員しなくちゃなあ」と思い始めます。なので渡航時期や語学学校のスケジュールはよく考えたほうがいいです。

2年前に書いたようにカナダでの職探しの手段は人のツテか、直接働きたい場所に出向いてレジュメ(履歴書)を配るかの二通りになります。インターネット(craigslistJob Bank, Monsterなど)に公開されている求人は競争率がすごすぎてほとんど抽選みたいなかんじなので望み薄。企業の公式ホームページに載ってる求人もほとんど返事なかったです。

【コネ作戦】こっちに来たばっかりだとコネなんかないかもしれないけど、だったらつくればいいだけです。語学学校のクラスメイトや先生、ホストファミリーやルームメイト、留学センターのスタッフさん、はたまたバーで隣に座った知らない人など、とにかくみーんなに仕事を探していると伝えておくとけっこう紹介してもらえたりします。最終的にはもちろんマネージャーとの面接で気に入ってもらえるかどうかですが、面接してもらえるというだけでラッキーだし、人の推薦があれば明らかに有利です。

【突撃作戦】直接レジュメを配る方法については後で説明します。

レジュメ作成

仕事探しに必要なのは電話番号とレジュメです。携帯がないと面接の連絡も採用の連絡ももらえないので何はなくともとりあえず契約しましょう。あとSINナンバーも早めに取っておきましょうね。

レジュメは日本と違って専用の用紙があるわけではなく自分でパソコンで作ります。手書きは不可。テンプレートがネットや本でいくらでも見つかるのでそれを参考にして作成します。ここでなんと!わたしのレジュメ飲食店用の現物を公開します!よっ太っ腹。許可なく一部または全部パクってもらって全然結構です(その後の結果は責任取りません。)古いものだし、永住権取れるまでは仕事変えられないのでもう使うこともあるまい。

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飲食店のレジュメはこれくらい簡潔でいいらしい。できればA4一枚に収めます。わたしはこれにavailability(出勤できる曜日と時間帯)を書いた付箋を貼ってました。カバーレターはいらないと思う。飲食店では要するにシフトに融通の利く、即戦力(経験者)が欲しいのです。もちろん極めればめちゃくちゃ奥の深い仕事ですが、まあ入り口としては誰でもできる仕事なので…。

レジュメで一番重要な項目は職歴です。バイト歴も立派な職歴になるので、応募先で有利になりそうなものをピックアップしてアピールします。外国(日本など)での勤務先は名前だけ書いても先方には何をしているところなのかわからないので簡単な説明を添えます。仕事内容も具体的に。あとこれはYWCA(職安)の人に教わったんだけど、お店の規模=席数もズバリ書いておくとイメージしやすくてよいです。わたしは「超忙しいファミレス(席数120)とちょっとシックなビストロ(席数19)両方でバイトしていた。この道9年の飲食店のプロフェッショナルです(照)」と書きました。こちらでは謙虚であることは一切評価されません。自分がどれだけすばらしい人間かをやや誇張気味にグイグイ売り込みましょう。あ、嘘はだめですぞー。

学歴は専門職でないかぎりほとんど無意味なので一応参考程度に書くくらいで。語学学校修了っていうのを最初は書いてたんだけど、英語できませんって言ってるようで逆効果か?と思ったので途中で消しました。Language:Good Command in English, Fluent in Japanese,(そしてK-POPが好きってだけで韓国語基礎できますとか書いてる笑)っていうのも今思えばいらなかったな。英語はできて当たり前だから。フランス語か中国語ができる場合はかなり好印象なので絶対書きましょう。資格は運転免許くらい書いてもよかったかな?車使う仕事じゃなければいらないかも。飲食店ではServing It Rightという資格を持ってると超有利です。お酒を出す店は確かこれがないと働けないとかだった。Food Safeも!簡単に取れるみたいなので時間があれば持っておくといいかも。そういえばボランティア歴も書く人は書いてるなー。まあ志望する仕事に関係ある場合は書いてもいいでしょう。

レジュメはとにかく簡潔に必要な情報、有利になる情報だけ書くこと。逆に必要でない情報、不利になる情報は書かないこと。日本と違って性別、年齢、婚姻ステータスを書いたり写真を貼るのは必要ないどころか非常識になるので気をつけましょう。国籍やビザのステータスも書く必要ないし、面接でも聞かれるまで答える必要ないです。

だいたい自分で書けたら、あるいは書けなかったら、ネイティブの人に添削してもらいます。語学学校の先生やYWCAのカウンセラーさんなど、できればプロに相談するといいです。(YWCAとは:前の記事にも書きましたが無料の就職支援を行っているNPO団体のこと)バンクーバー公立図書館の各ロケーションでもよくレジュメ添削イベントをやっています。スペルミスなんか論外、大文字小文字の使い方、スペースの使い方や全体のレイアウトにも気をつけましょう。簡潔にするために略式の文法が使われたりもします。この辺はハウツー本が山ほど出てるので読めばわかります。ハウツー本は本屋で買ってもいいですが、図書館やYWCAでは無料で閲覧できます。

アパレル用のレジュメは飲食店用よりフォーマルに書いたので2枚になりました。まあ基本は飲食店用と一緒なんだけど一応販売系のキャリアを強調。(日本でやみくもにいろんなバイトしててよかった…)あとこっちはカバーレターという挨拶状もつけました。レジュメの上にホッチキス留め。文章はショップごとに細部をアレンジして使いまわし。大手ブランドはけっこう専用のアプリケーションフォームを用意している場合が多いので応募する前にまずはお店を訪ねて話を聞きます。これがかなり細かくてその場でチョイチョイっと書けるようなものでもないので、用紙をもらっておうちで記入して後日改めてレジュメ、カバーレターと一緒に提出しに行きます。


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ちなみにこのカバーレターとレジュメをPDFファイルにして企業の問い合わせ用メールアドレスにCareer Inquiryのタイトルで送ったらけっこう返事がきました。ネットの求人とはいったいなんだったのか。

レジュメ配り

【飲食店編】
さて、書けたレジュメを大量に印刷して街中の飲食店にバラ撒きます。ランチやディナーの忙しい時間帯は遠慮するのが常識でしょう。レジュメを渡す時はまずお客さんと間違われないように「客ではないオーラ」を出しながらHello, how are you?と元気に挨拶します。第一印象は大事。次に仕事を探している旨を伝えますが、よっぽど高級なレストランでなければAre you guys hiring now?くらいで充分です。丁寧に言う場合はI'm currently looking for a job, I'm wondering if there are any job opportunities hereとかね。最初から店長っぽい人に声をかけるのが早いですが、店長じゃないっぽい人ならだいたい「さあ…たぶんね。レジュメある?」と聞いてくれるはずです。そしたらYes, Here is my resume. I'm available anytime, including weekendsとか言ってアピールします。もしも「今は求人してないです」ときっぱり言われたら、まあ引っ込みもつかないのでCan you keep my resume just in case something comes up?と言って強引に手渡します笑。最初は緊張するけど3軒5軒とこなすうちに慣れるはず。手渡したレジュメは残念ながらバックルームに適当に放置され、運よく発掘されれば面接の連絡が来ます。この辺はほんとにタイミングですね。

【アパレル編】
お洋服屋さんだけじゃなくてアクセサリーとか雑貨屋とか、なんでもいいから販売の店全部にレジュメを配りました。街を歩いているとけっこう店先にHelp Neededとかって求人ポスターが出ていることがあります。だからチャンスと思ったのに全然連絡来なかったです(涙)どうしても働きたい店がある場合はレジュメを出した後、一週間くらい後にフォローアップしに行く場合もあります。もう一度店を訪れてI dropped my resume about a week ago. I was wondering if the manager got a chance to take a look at itとか言って面接を催促します。本当に本当に仕事が見つからなくて参っていた時は店員さんを捕まえて「ぶっちゃけこの仕事をゲットするの難しかったですか?面接とかどんなでしたか?実際採用されるまでにどれくらいかかりましたか?外国人でも雇ってくれると思いますか?」と聞き込み調査したりもしました。そうするとだいたい親身になってアドバイスをくれます。このように仕事探しのプロセスは英語を話すことと、勇気を出して自分を売り込むことの勉強で、必ずその後の自分にとってプラスになってくれるので、遠回りしたら逆にラッキーと思いましょう。

面接

早いときはその日のうち、時には数ヵ月後すっかり忘れた頃にレジュメを見た担当者から電話がかかってきます。あちこちに配っているのでどの店の誰なのか全然わかりません笑。必ず店名とどのロケーションで面接するのかよく確認しましょう。日時はだいたい向こうで指定してくれます。

英語の面接は超緊張しますが、英語苦手だし…とか思ったり、間違っても言わないこと(「英語はできないけどヤル気はあります」とかね)です。失礼な話こんな喋れないのによく仕事見つかったな…って人も普通にジャパレス以外で働いてたりするので全然気にしないで大丈夫。明るい印象を持ってもらえるよう大きい声で、笑顔で話すことだけを考えるように。ワーホリがエントリーできるようなカジュアルな仕事ではそんなに難しいことは求められていないはずですが、不安回避のために一応対策本なんかに目を通すのもいいと思います。ネットで簡単にググってもいいね。本当に心配性な人はYWCAや図書館でやってる面接対策ワークショプに参加するのもアリ。さっきからやたらとYWCAと図書館を推してますがこれは単に「タダのもんは全部利用しておけ」という貧乏人根性のためです。

Top 10 Interview Tips
The Top 50 interview questions and how to handle them
101 Dynamite Answers to Interview Questions

【飲食店編】
飲食店の面接は雑談程度でたいしたことは聞かれないです。いつシフト入れるかとか、飲食店での経験はあるかとか、あと英語があやしいのがバレると出身とかどれくらいバンクーバーにいるかとか。必ず最後に質問は?と聞かれると思うので何か質問したりとか。「ないです」はちょっとさみしいので適当に2,3質問することで積極性をアピールします。

【アパレル編】
アパレルはレジュメ出してもほとんど返事がなかったです。しかし、それとは別にジョブフェアといって各ブランド主催の一斉採用イベントがあるのでこれは要チェック。バンクーバーはまだ成長途中の街で、大手ブランドがどんどん進出してきたり、新規店舗を準備中だったりします。そういう時に大量にスタッフが必要なのです。ジョブフェアの開催予定はネットや、建設予定地の看板なんかに出てます。これは催事場などで数日間行われて、レジュメだけ持ってフラリと訪れれば直接採用担当者に(集団)面接してもらえるというもの。大チャンス!これは面接というかオーディションで、アプリケーションフォームやレジュメは軽く目を通す程度で見た目がオシャレな人をインスピレーションで採っているんじゃないかと思います。カナダはオシャレな人が少ないので一張羅でキメていけば日本人ワーホリでも絶対チャンスあります。初めて行ったジョブフェアで、10人くらいの集団面接だったんだけどわたしだけが「あなたのファッション、いいわね」って面接官に褒められたので「これはイケるな」と思ったらやっぱり最終面接に呼ばれました(ここで緊張しすぎてトチり、不採用)。質問は飲食店よりは難しいです。アパレルだけあって普段の着こなしで気をつけてることとか、チェックしてる雑誌とか聞かれた。一緒にジョブフェア行った友達は「自分を車に例えるとどんな車?」とか聞かれたらしい。集団面接なんか日本でもやったことないのでできるのか不安だったけど、案外他の人がつまんないこと、前の人と同じ意味のことを言ってたりして拍子抜け。その中で目立てるようにちょっと変わった事を言うようにしました。

採用されたら

面接の後はその場で採用か、「今週中に採用の場合のみ連絡します」と言われたりします。個人的に後者は望み薄だと思う。不採用の連絡は基本的にありません。

アパレルは採用されなかったのでわかりませんが飲食は採用さえされてしまえば仕事自体は非常にラクです。日本でバイトした経験がある人が当時のペースで働くと仕事が早すぎてびっくりされたりします。外人は本当にトロいので…笑。ただし合理主義でもあるので成長の見込みがないと判断されればいきなりクビになったりもします。まあ真面目にやってればまず大丈夫。接客の英語はパターンが決まっているので最初の数日で覚えてしまいましょう。他の人が言っていることをマネするだけ。多少トチってもお客さんは超優しいので大丈夫。完全にこちらのミスの時でも謝れば「いいよ、いいよ」と許してくれます。ものすごい混雑のとき「お待たせしてしまってごめんなさい」と言ったら、お客さんが「悪いのは君じゃない、君のボスのスケジュールミスだ。それに君はこんな激忙しいのによくがんばってるよ。ぼくならこの状況で笑顔で接客なんかできないもの」と励ましてくれて泣きそうになった…。列に並んでるほかのお客さんも「がんばってね!」と応援してくれたり、チップをはずんでくれたり。トータルで2年間、2つの飲食店でバイトしてきましたがひどいクレーマーみたいなのは一回しか会ったことないです。その時は完全に言いがかり系だったので、その場に居合わせた他のお客さんが「おいおい君、ムチャ言うなよ」と助け舟を出してくれました。そして騒ぎを聞きつけた店長が出てきて一言「うちの大事なバイトをいじめる客なんかいらない。今すぐ出て行って二度と戻って来ないでください」。日本じゃありえないよね、この展開。お客様は神様じゃない!

外国で仕事をしてておもしろいなと思ったのは雇用主と従業員、そしてお客さんまでが対等な関係で、誰も偉くないということ。だからバイトのわたしたちもお客さんに必要以上にペコペコする必要はないし、納得いかないことがあればボスや大ボスにも堂々と意見していいんです。でも日系のお店だとその限りではないかもね…なにしろ日系だからね。わたしは貧乏で貧乏で、どんな仕事でもいいから欲しいというときでも完全英語環境のカナダ企業で働きたいという条件だけは絶対譲れませんでした。それは英語を話したかったのと、あとはこういう労働の概念の違いに薄々気づいていたからでもありました。ここバンクーバーには日本食レストランがたくさんあり、オーナーは日本人だったりその他アジア系だったりするんですが、中には日本の悪しき風潮そのままにサービス残業が常態化しているとか、会社が従業員を大切にしないとか、従業員に必要以上の忠誠心を求めるとか、悪い噂も聞く店もあるので…あくまで噂ですが、まあ普通に考えてその傾向はあるでしょ。働き始める前に州の労働基準法はよく読んでおくこと。これを守るのは雇用主と従業員の義務です。法律は法律なので、違反があった場合は当然訴えることだってできます。働くほうもそれくらい強気でいることが、こちらでは当然なのです。

もちろん日系以外でも比較的小さいお店ではけっこうトラブルがあると聞きます。せっかくカナダに来てチェーンのファーストフードなんてダサいと思うかもしれないけど、現在わたしは大きい会社で働くことの安心をめいっぱい楽しんでいます。スケジュールと実際の労働時間はコンピューター管理で本社にリポートが行ってるし、仕事は厳格なマニュアル通りにこなすだけだし、契約は絶対だし、何か困ったことがあった時のサポート体制がちゃんと整ってるから。早い話が店長に訴えて動いてもらえない場合に会社に訴えることができるのです(いまの店長は超いい人なので必要ないですが)。というか、エリアマネージャーや本社の人がガンガン抜き打ちで調査に来るので訴えなくても気づいてくれるはず。営業成績や貢献度によってバイトにもプチボーナスが出たり、昇進や時給の見直しも随時。きょうだいや親子で働いてる人も多く、それだけ信頼できる企業なんだと思います。

また、他の記事に詳しく書いたのですが今の会社はワークパーミットのスポンサーにもなってくれました。これには安くない費用と企業の実績が必要とされますが、「大きい会社だから移民の一人や二人雇うのなんか全然平気だよ」と言って、すでに帰国していた見ず知らずのわたしを招いてくれたのです。往復の航空券代まで全額負担してくれて、契約書通り毎週32時間~40時間のスケジュールを過不足なく与えてくれます。会社には本当に本当に感謝。それは仕事のパフォーマンスで返していくしかないと思っていて、ボスはちゃんとその気持ちに気づいてくれています。ワーク狙う人は一般的にジャパレス、寿司シェフを足がかりにすると思うのですがファストフードも視野に入れてみてはいかが。

先に法律遵守うんぬんと語ったわたしですが、実はワーホリ時代ビザ出すと言ってくれたバイト先を信じ労働基準法?なにそれ?状態で奴隷のように働いて、結局騙されてしまったという過去があります。わたしの英語力や奥手な性格のせいではなく、一緒に働いてきた戦友であるオーストラリア人もです。ビザをちらつかせて移民をこき使うという手口はまかり通っていますが、自分が渦中に居るときは気づかないものです。誰にもわたしたちと同じ思いはして欲しくないです。そこもまあまあ大きいチェーンだったんだけど、フランチャイズのオーナーが悪人だったんですねー。多分あの人たちLMO申請すらしていないと思う。信じたわたしがバカでした。早い段階で本社と、LMO提出先の機関に連絡を取るべきだった。連日の超過労働で思考がストップしていたのかな。だけどそのお店で知り合った元カレの紹介で今の会社と出会えたので、あれはあれでよかったんだと思うことにしています。友達たくさんできて、仕事は1000倍つらかったはずなのに正直今のお店より楽しかったし。いい思い出です。

ワーホリの一年間はあまりに短いです。仕事を探すのには時間がかかる場合もあるので、なかなか「気に入らないから仕事変えよう」というわけにもいかないのです。だからこそなるべく早く準備を始め、いろんな会社を訪れ、面接の機会があれば逆にこちらが面接してやるくらいの気持ちで慎重にバイト先を選びましょう。収入面でおすすめなのはカウンター式じゃないレストラン(時給以外にすごい額のチップが期待できる)、ラクなのはヒマなピザ屋(とにかくサボれる)、楽しそうなのはグランビルアイランド(ルームメイトが実際働いて世界中から来たグルメな友達が大量にできた)…。せっかくだから人と関わる仕事がいいと思いませんか?こっちの人はフレンドリーだからお客さんと仲良くなることも非常によくあります。海外で仕事をする経験は日本では評価されないかもしれないけど、とにかく楽しいんです。Good luck to all job seekers!