2012/03/09

Cinema Review: The Artist



The Artist(2011) 『アーティスト』2012年4月7日日本公開 公式サイト imdb 予告編
2012/03/09 Cineplex Odeon Screen 1にて。第84回アカデミー賞5冠(作品賞、監督賞、主演男優賞、衣装デザイン賞、作曲賞)の快挙を果たしたフランス映画。なんと無声、白黒映画です。映画創生期の奮闘にあらためて賛辞を送った『ヒューゴ』と今年のアカデミー賞を競った作品。たまたまでしょうけど似たテーマが並びました。


【あらすじ】
女優志望のペピーは無声映画時代のスター俳優、ジョージと出会う。憧れのスターは無名エキストラの彼女に優しく語り掛けた。「女優になりたいんだね。だったら、他の人が持っていない何かを身につけるんだ」ジョージはペピーの頬にほくろを描く。持ち前のチャーミングなキャラクターと、キュートなほくろで一気にスターダムへのし上がるペピー。時代はまさにサイレントからトーキーへの転換期。「喋らない俳優はもう要らない」と言われてもサイレントにこだわり、自らメガホンをとるが失敗、富も名声も家族もプライドも失ったジョージ。手元に残るのはいまやお役御免のサイレント映画のフィルムだけ。そんな絶望の淵に、売れっ子女優となったペピーと再会するが…


【感想】
全編白黒サイレント映画、音楽アリ。冒頭にその様子が出てくるんだけど、昔はサイレント映画にオーケストラが演奏して音楽をつけていたんだよね。贅沢!音がないので台詞はときどき出るテロップのみ、映像で勝負の時代です。おおおお!って記憶に残るカットはいくつもあって、物語はシンプル。このシーン、本物のサイレント映画だったら心から感動しただろうな、って、おーい!結局まがいものでしかない。率直に申し上げるとおもしろくなかったです。古いものは古いからいいんだなあ、という印象。最新のデジタル技術で真似てみても、何かが違う。ヴィンテージワインに高いお金を払うのは熟成の時間を買っているわけで、東急ハンズで売ってるかき混ぜるだけで10年熟成されるマドラーを使ったところで意味がないんだよね。フランス版『Always 三丁目の夕日』ってかんじ。(ちなみにわたしは『三丁目の夕日』そんなに嫌いじゃないんだぞ)サイレント時代への愛情が特に感じられなかった。「これって今やると新鮮でしょ?」って意図がミエミエ。単純ながら饒舌だったストーリーもいまや陳腐なだけ。あー、なんか本物のサイレント映画が急に観たくなっちゃった。リスペクトと懐古は似て非なるものである。3D映画世代の子供たちに、『月世界旅行』より先に『ヒューゴ』を観せたいと思った。しかし『The Artist』よりは『街の灯』を先に観せたいと思う。無声映画って、『街の灯』と『フリークス』くらいしか知らないわたしだけれど。サイレント映画を知らない世代がこれをサイレント映画だと思ってしまったらマズいよね。先祖たちが化けて出るよ。やっぱりアカデミー賞なんてアテにならない。これが今年一番の映画?冗談でしょう。


それにしても主演ワン優賞との呼び声高いジャック・ラッセルのuggyちゃんが超カワユイ。ネコ派のわたしもさすがに参りました。知り合いでジャック飼ってる人がやたら多くて、そのコたちに会いたくなっちゃった。かわいいよう、わんわんちゃん。ワンコ映画としてはいいと思います。

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