2012/02/06

明日は料理王

もう24歳なのに料理をしたことがただの一度もない。どうしてこんなことになったのかわからないが、とにかく一度もない。それを自慢できる年頃はとうに過ぎた。24になって林檎も剥けない女は一言、ただの欠陥品である。


そこで、というわけでもないけれどカナダに来て自炊を始めた。わたしというのは本当に追い詰められないとテコでも動かない人間である。追い詰められたので自炊を始めた。
一人分の食事を自炊するのはかえって非経済的だと思っていたけれど、ここでの外食費は思いのほか高い。税金とチップが高いからね。そして何でも量がイカれていて、4分の1食べられればいいほうだ。残りは包んでもらって明日の夜まで毎食同じものを食べるはめになる。ピザ屋とバーガー屋はそこら中にあって、すし屋もそれと同じくらいよく見かける。あとなぜかベトナムフォー屋も多い。移民の国なので各国料理が何でも簡単に食べられる。しかし相変わらず一緒に食事する友人がいないのでレストランに入れず、選択肢はファストフードだけになる。そういえばこちらには気軽に買えるスーパーのお惣菜みたいなものがあまりない。コンビニにはお惣菜は売ってない。わたしが住んでいるところはダウンタウンからは遠く離れた閑静な住宅街で、さらに選択肢は狭くなる。これだけ追い詰められて初めて重い腰をあげる。


シェアハウスで生活に必要なものは何でもあるとはいえ、油も砂糖も塩もない。「何でも」というのは鍋や包丁やまな板のことだったのだ。初期投資資金はそれなりにかかるけれど、だんだん買い揃えている。これは食費ではなく学費にカウントすべきであろう。次に欲しいのは小麦粉。言うても短期滞在者、今の家にどれくらいの期間住むかわからないし、学校に通い始めたら自炊する暇なんかなくなるかもしれないので買い物には注意深くなる。油でも砂糖でも塩でも、これまたいちいち単位が狂ったようにデカいのだ。ケチャップや酢はあまり好まないので必要な時はハンバーガー屋に置いてある個装を拝借。食材は店によって値段が驚くほど違うのでノートにメモを取って一番安いところで買う。チラシもチェック。うちの大家がめちゃくちゃケチなのでセール情報に詳しい。「今日チキン安かったで!バス乗ってでも行く価値あるで!」って教えてくれる。ダウンタウンに住んでる人ってどこで買い物してるのかしら。何でも高いね、都会は。こっち来るとだいぶ安いよ。少なくとも橋は絶対に渡るべき。一番おすすめなのは4th avenueの西側、jerichoのほうにあるPaul's no frills alma店。ダウンタウンからでも7番バスですぐ。長年住んでいる大家が口スッパく「no frillsはチェックしたのか」と聞くので間違いないと思う。IGA?とんでもない!ありゃ日本でいう紀伊国屋だ。


料理ができないくせに味にはめっぽううるさい。味にはめっぽううるさいので、いい料理人になる素質はなくはないと前から思っていた。しかし目の前に置いてあるキャベツ一玉を見てこれをいったいどうしたらいつもレストランで食べているキャベツの状態に持っていくのかがわからない。はがすの…?洗うの?縦に切るの?横?芯は?冗談のような話だけれど本当に見当もつかない。万事この調子。こんなこともあろうかと日本の本屋で一番初級者向けの料理本を探して買ってきたのだ。同じような人間は一定層いると見えて、このテのビギナー本はけっこうな種類があった。
しかしこの本の気に入らないのは、突然豆板醤やオイスターソース、白ワインビネガーが登場するところだ。料理初心者がこんなものを持っているはずがなかろう。料理初心者とはいえ、料理初心者の陥りやすい失敗はなんとなくわかる。本の通り作ろうとしてわけのわからないスパイスや野菜をどんどん揃えて、他に使い道がなく余らせるというアレでしょう?想像するに、毎日自炊するとなればリレーのように上手に食材を繋げて使い切っていくべきなのだ。冷凍保存という手もある。リレーチームの調和を乱すいささか珍奇な食材を手なずけるのは、ずっと先の話。それくらいはわたしにもわかる。


以下、作った料理の一部を時間順に並べてみる。これだけの短期間でなかなかの上達が見られるではないか。極端な性格なので今は一日中料理のことだけを考えている。じょじょに英語の勉強モードに移行していかないとそのうち調理師免許が欲しいとか言い出しそう。何のためにカナダまで来たのだ。


記念すべき人生初料理、豚肉とブロッコリーの炒めもの、アンチョビ風味。
この時オリーブオイルしか持ってなかったので全てがペペロン風だった

サラダ油と酒、みりん、醤油を手に入れたので生姜焼き。
キャベツの千切りがこんなに難易度高いとは…
豚肉に飽きて冷凍むきエビを買ってみた。ごま油もゲットしたので青梗菜と炒めて中華系に持っていく試み。
これでもかというほど生姜を投入したらムセた

またエビ。さらに片栗粉をゲットしたのでトロミをつけようとしたら失敗してダンゴ状に。
しかしエビは解凍してから酒でもみ洗いするという事をネットで学んだ

パスタに目覚める。味はそんなに悪くないがとにかく量が多い。

生まれて初めて米を炊いた。炊飯器がポンコツなので普通の鍋で。完璧にできて感動。
まとめて炊いて一食分ずつ冷凍保存だっ

牛ひき肉のそぼろ。弁当にも使えそう。おふくろの味。これも冷凍保存だっ。
本当は炒り卵も一緒に作りたかったけど卵は1ダースが最小単位なので手が出ない。一週間卵ばかり食べ続けるのはそれなりの覚悟が必要だ。

鶏肉と蓮根(rotus root)のペペロンソテー。
近所にアジア人経営のグロサリーが3軒あり、エスニック食材は割と手に入りやすい

クリームパスタにチャレンジ。バターとチーズがないのでコクがない。
片栗粉で強引にトロミをつける

昨日の晩作った鶏肉と蓮根のペペロンソテー(©オレンジページ)のバトンを受け取って、明日は煮物を作ってみようと思う。今日にんじんといんげん、干し椎茸を買ってきた。ごぼうが見つからず。
そのまた次は、ついに肉じゃがにを作ろう!憧れの肉じゃが!!!!!これでわたしもモテ放題。


さて、ここでわたしに食育をほどこした夜のビストロバイトのマスターに感謝の意を表したい。あの店で出会ったグルメな友達、素敵なお客さん方にも。料理のカンみたいなものは全てここで養った。イエーイ読んでる?おかげさまで美味しいものしか食べられない舌になったよ!どうしてくれる!

2 comments:

桜 said...

まず。この状況にびっくりです。
どうしちゃったの!?

実家離れると色々頑張らなくちゃいけないこと
いっぱいあるよね~
しかも国外!
私は埼玉だけど3年前に実家を出てひーこら
言いましたもん。特に同じく料理には泣かされました。
未だに客人に自分の料理は出せずお客が来る
寸前に安い寿司をたらふく買っては高級皿に
ゴージャスに盛り付けてるよ 笑

ちいのブログ最高!
楽しく読んでるよん
更新を旦那さんと楽しみに待ってるね

それでは・・・
頑張れ!ゴルバチョフ千尋よ!
日本から応援してまーす

ゴルバチョフ千尋 said...

さくらさん
もしかしてカナダ行くの知らなかった?メールしたやん!届いた?なんかごっそり送信不可で返ってきたけど頭がこんがらがり、そのままそっと携帯を閉じた…
実際急に決めたからめちゃくちゃバタバタしてたのよね。正月くらいにいきなり航空券とって2週間後に出発。相変わらず行き当たりばったりだ。ブログ読んでくれてありがとう。今は友達がパソコンだけですわ。
ちいも遠くからFEEL応援しております。