2012/05/15

Cinema Review: Bridesmades


Bridesmades(2011) 『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』4月28日 日本公開中
 公式サイト  imdb 予告編


【あらすじ】
30代で事業に失敗し、店も財産も共同経営者である恋人も失ったパティシエのアニー。母親のツテの宝飾店で無気力に働きながら、おかしなルームメイトと共同生活中。リッチだけど軽薄なセックスフレンドと寝る度、よけいに寂しさを感じる日々。失意のさなか、唯一の幼なじみリリアンが婚約しブライズメイズ bridesmades(花嫁の友人や親戚から選出される花嫁介添人グループ)のリーダー、メイド・オブ・オナー made of honorに指名される。結婚式本番はもちろん、婚約記念パーティやバチェラー・パーティーbachelor party (独身最後ハジけようパーティ)、シャワー(前祝い)など諸々のイベントを全てプロデュースする総幹事という大役だ。自分の世話でいっぱいいっぱいな最悪のタイミングでも親友の結婚を祝福しようと奮闘するアニー。しかしキャラの濃すぎる他4人のブライズメイズに振り回され、中でも成金女ヘレンが「あたしがリリアンの親友よ」としゃしゃり出てきたもんだからアニーはブチ切れ。アニーのアイデアをパクり、金にモノをいわせ次々とゴージャス企画を立てるヘレンに親友の座を奪われまいとがんばればがんばるほど全て裏目に出る。ついに犯した大失敗によってブライズメイズをクビになり、さらにブチ切れるアニー。女たちの興奮と不安をひっきりなしに続くギャグ(含、ゲロウンコ屁)で明るく、時に物悲しく表現した結婚狂想曲。結婚とは事件だ!


 【感想】
女子に特有の現象なのかどうかは知りませんが、親友の座を奪い合うみたいなのあるなー。あるある。親友の親友って微妙な関係なんだよね。親友が選んだ友達だからって、自分と似たタイプだとは限らない。人間は多面体なのです。アニーと花嫁リリアンは本当に幼少時代からの幼なじみなのに、友達歴せいぜい一年そこらの自称親友ヘレンが仕切りだす。しかも露骨にイヤな女!「なんなのあいつ?」って文句言ったら「彼女いいコだよ。わたしのためだと思って仲良くなってよ」なんて言われたりして…。新旧親友バトルで神経をすり減らしていくのですが、最後はあっさり戦友になる流れもまた映画的なご都合ではなく「あるある」なのです。友情ってそんなもんよ。少なくともわたしにとっては。大嫌いだったコでもじっくり話したら「あれ、ちょっとかわいいところあるじゃない」なんてね。


ブライズメイズのメンバーは他にベテラン母ちゃん、新妻、デブキャラ。そこに花嫁とさまざまなキャラクターがそれぞれの悩みをコミカルにぶちまけます。ウンコもゲロもブチまけます。わたしは嘔吐物に過剰な恐怖があるのでゲロ映画は避けているのですがこれはギリギリセーフということにしましょう。でも苦手な人は注意。思ったより性的なギャグは少なかったんだけど、シモはシモでもそっちのシモかい!っていう。シモネタに限らずギャグがちょっとクドかった印象。デブキャラ3人がデブなのはもう十分わかった。


結婚式前夜、男たちだけのバチェラーパーティをとことん下品に描いた爆笑コメディ『ハングオーバー』の女性版とも言われてる本作ですが、むしろ『スーパー・バッド 童貞ウォーズ』と対になっている作品のように思います。卒業を目前に控えた男子高校生たちが、野郎同士でバカふざけした少年時代への別れの予感を、それぞれ意中の女子といい雰囲気になるラストシーンに象徴させたせつない青春ドラマ。結婚したからって、彼女ができたからって、友情が変わるわけないのは分かっているのだけれど、成長することは変化することで、変化することは誰にとってもこわいことだ。元いた場所にはもう戻れないかもしれないんだもの。


ところでアニーは30代にしてほぼ無一文、ルームメイトに追い出され実家に戻るという悲惨な状況なのですが、「30代にもなって何やってんだか」というニュアンスがあまり感じられないのが文化の違いだなと思いました。結婚にしても行き遅れの焦りはもちろんあるんだけど、「このトシで」ってところは重要じゃない。日本人の感覚からしたらここを強調したくなるよね。
カナダに来て出会った人々は年齢を全く気にしてない様子。「わたしも今年25だよ。しっかりしなきゃ」と言ったら、ベルギー出身の28歳で院生の友達に「???25ってしっかりする年なの?なんで?」と不思議がられました。図書館主催の就職説明会に出た時は40代半ばで一年間ワーホリに来てるヨーロッパ人(国の名前忘れた)と話した。日本ではワーホリは31歳以下の若い人にしかビザが出ないんですが他の国では違うみたい。北米では履歴書に年齢を書く習慣はないし、面接で聞くのは違法行為にあたります。日本と、わたしが知ってる中では韓国なんか年齢をものすごく重要視する傾向があるね。こうして客観視してみると不思議な文化だ。年を取ればえらくなれるわけではないし、なる必要もない。


ちょうどこれを書いている途中に親友からメール。昨日かおとといもらったメールの返事をまだ返していない。「毎日のようにメールごめん、話聞いてくれる友達が他にいない(以下、延々ノロケ話)」だって。東京にいた時は二週に一度かそれ以上の頻度で飲みに行っていて、こうしてカナダに移ってからも頻繁にメールをくれる。もし彼女が恋人と結婚したら東京を離れることになりそうで、自分はカナダにいるくせにそれを思うとさみしくていやんなっちゃう。彼女含めだんだんと近しい友人の結婚の話なんかも出つつある自分にとって、個人的にイタイ作品でありました。というか、それどころではなくアニーと自分の状況を重ねてしまい久しぶりに翌日目が腫れるほど泣いてしまった(『トイ・ストーリー3』ぶり)。アニーもわたしも、災難が降りかかってきているのではなく全て自分で引き起こした問題、自分のせいで苦しんでいるのです。映画の中ではつい面倒がって直しわすれたテールランプに象徴されていた。繰り返し注意してくれていた警官とちょっといい感じになるも、妙なプライドが邪魔をしてつっぱねてしまい、テールランプは直さず、事故を起こす。ランプを直さなかったのも、孤独なくせに自ら人を遠ざけていたのも自分。この人はなんかやってくれるなと思っていたおデブちゃん(この役でアカデミー賞助演女優賞ノミネート)が馬乗りビンタしながら「自分をかわいそうがってんじゃないよ!戦いな!」とアニーに説教するシーンは胸に刺さります。悲惨な状況は誰のせいでもなく自分のせいだと認めること、そこから抜け出すsolutionは自分の手の中にあるということ。
アニーはいじけてはいるけれど、メソメソ泣いたりはしない。怒りを丸出しにしてガオーガオーと暴れまくる様子は痛々しいけどおもしろい。人生に起こる困難、長い目で見ればコメディだと思えるようにしたい。ほとんど全ての事は後から考えると笑っちゃうもんね。


映画レビューはあまり感情的になって書くのはよくないなとも思うのですが日記も兼ねているし、これもわたしの書き方のスタイルなのかな。すまんね、日記に付き合わせて。


 【ひとくち英語メモ】
You need to blaze a trail for me and then report back and tell me what’s coming.
(あんたが先導者として、結婚ってどんなものなのか報告しなさいよね。)
blaze a  trail というのは後に続く者のために道しるべをつけるという意味。結婚式前夜、突如マリッジブルーに陥る花嫁をアニーが「大丈夫、きっと大丈夫。全てなんとかなるはずだよ、わたしもあんたも。」となだめるシーンより。

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