2019/12/23

Don't Wait to See レーシック手術を受けた

カナダ監督協会の福利厚生で$2000の補助が出るというので、ついに念願のレーシック手術を受けてきた。ほぼこれ目当てでメンバーになったようなものだからな。実は去年一度相談に行ったんだけど、思ったより費用が高い上に当時勤めていた銀行の保険では$600しかカバーされず泣く泣く見送ったのであった。転職したところでこんな短期間で給料が大幅アップするとか、もっと良い福利厚生を受けられるなんて夢にも思わなかったな…。本当この1年で環境が劇的に変わった。

885 W Georgia St #110A 
Vancouver BC, V6C 2G2
(604) 639-8088

前回と同じ大手クリニックLasik MDに連絡してみたところ、さんざん精密検査してもらったのに1年以上も時間が開いてしまったので検査しなおしとのこと。とはいえデータは残ってるので変化の可能性がある箇所だけ再検査で1時間くらいで終わった。要するに普通の視力検査みたいなのと、機械を覗き込んでビカビカ光を見させられるというようなものでした。最初のカウンセリングの時はこの他に瞳孔を強制的に開く目薬をさして目玉をめちゃくちゃ精密に診られて角膜の厚み?などを調べた。レーシックは向いている人とそうでない人がいて、日本でだけど実際向いてないと診断されて受けられなかった人を知っている。わたしの場合は手術は受けられるが視力が極端に悪いので料金が高くなると言われた。Lasik MDは「業界最安値保証!片目$490〜」を謳っているのだがこれは大して目が悪くない人が最もシンプルな手術を受けた時の参考料金なんだそうです、どうせそんなこったろうと思ったぜ。結局支払った総額は手術+フォローアップ検診3回で$3300と、目薬代$60(ユニオンの保険適用後の価格)。レシートを提出すると保険会社から$2000返金されるという仕組み。分割払いオプションもあるようです。

手術前のわたしの視力は0.1以下、コンタクトや瓶底眼鏡を使ってもまだろくに見えていない状態。ギンギンに見えるまで度数を上げてしまうと頭痛などの症状が出るため、日常生活でそんなに良く見えなくても別にいいですよね?とコンタクト屋にも眼鏡屋にも勧められたからである。仕事は肉体労働な上に炎天下や大雨にさらされる事も多く眼鏡だと不便なんだけど、長時間労働でもあるので本来8時間以上連続装用するべきではないコンタクトは乾きまくりで辛い。休みの日もヨガの時やメイクでおしゃれしたい時はやっぱりコンタクト。使い捨てコンタクトは通販で買っていて年間$300くらいかかってるはず。眼鏡は普通のが2ペア(日本語の数え方わからず)と度入りサングラスが1ペア。万が一コンタクトに問題が起きた時のために1ペアは持ち歩くようにしている。前は元彼氏の家に1ペア置きっぱなしだった。裸眼ではまっすぐ歩くことすらできない。急なお泊まりとか無理ですから!


レーシックは日本では副作用や長期的なリスクを懸念する人が多いけど、カナダではけっこう知人でやったという話聞くしみんな絶賛してるし、もう大人なのでこの先老眼になるまでは極端に視力が変わることはないだろうし、とにかくもう目が悪い生活に疲れたので悪い評判とか全部シャットアウトして強行突破した。一番良く聞く副作用が「眩しい光に耐えられなくなる」で、これは照明技師であるわたしにとっては完全に致命的なんだけどまあ役者でもやってる人たくさんいるし(ブラピとか)、最悪サングラスをして仕事することも可能なのでもうどうにでもなれ。手術は来年になると思っていたら「明後日やっちゃいましょうか」と言われて若干怯むのであった。まあ先延ばしにしてもしょうがない。

当日は朝9時集合。最終確認でまた視力検査をし、支払いを済ませ待合室で待たされる。こんなに待たされると思っていなかったのでKindle置いてきちゃったよ。カウンセリングの時に「不安感が強い場合はザナックス(抗不安剤)を用意しています」と言われたことを直前になって思い出す。ザナックスは娯楽用に乱用されることが多い合法ドラッグ。ちょっとだけ味見してみたかったな…いやなんでもないです。

結局40分だか1時間だか待って手術室横の薄暗い部屋に通された。ヘアネットと靴カバーをして、麻酔の目薬をさしてもらう。この部屋で2人順番待ちをして、向こう側にもう2人手術直後の人がサングラスをしたまま休むエリアがある。わたしの次に並んでたのがいかにも神経質そうな女性で、ここで働いてるのかというくらいレーシックに詳しかった。いくつかのクリニックでカウンセリングを受けてここが一番信用できそうだったらしい。Googleで「レーシック バンクーバー」って調べて最初に出てきたところに即決したわたしの素直さよ…。

そうそう最近は普通のレーシックの他にPRK(オールレーザー)という術式があり、PRK専門のクリニックもあるんだって。わたしの目ならどちらでもイケるから当日選んでと言われた。そんなカジュアルなのかい。ネットで軽くリサーチし、当日ドクターと話して普通のレーシックに決めた。PRKのほうが$500高いけど効果は同じ、術後の治りはレーシックに比べてだいぶ遅い、ここ数年に実用化されたばかりの新しいテクノロジーなので謎も多い、などメリットが全然わからなかった。例えば角膜が薄いなど特定の目のコンディションの人にはこちらのほうが精密にできる?とかで安全度が高いようです。詳しいことは専門家に聞いてくれ。

いよいよドクターと握手し手術台に寝転ぶと、肝の据わったわたしもさすがにドキドキした。大量の目薬をジャブジャブ投入したら片目を紙テープで無理矢理閉じられ、片目はやはり紙テープで睫毛ごとこじ開けられルドヴィコ療法的なクリップをはめられる。「これよかったらどうぞ」と両手にストレスボールを握らされた。


手術の手順は理解してもおそろしいだけなので事前の説明は全て右から左へ聞き流した。目薬の海に溺れていて尖った器具が眼前に迫ってくる的な恐怖は無くて、ものすごくぼやけている。暗いところでぎゅっと目を閉じるとなんか模様が見えるアレの豪華版というかんじでけっこう面白かったです。一度真っ暗になって赤い星がたくさん見えるところがクライマックスだったな。目開いたままなのに真っ暗になるって、多分一瞬失明してるってことだよね。無機質な電子音と、ドクターと助手の人が視力の情報とレーザーの強度?を復唱して確認しているのがまた未来の言葉みたいに聞こえて全体的に『2001年宇宙の旅』っぽかった。


レーザーで目玉がこんがり焼ける匂いが香ばしい。歯医者でバイトしてた時の歯肉を焼く匂いと同じだね。人体の焼ける匂い!痛みはないけどグッと眼球を押される圧力は少し感じた。ものの10分15分で手術が終わり先ほどの部屋に戻って休んでいると麻酔が切れたのか少し沁みるような感覚が出てきて、ナイスタイミングで助手さんが目薬を追加しに来てくれた。人体とは不思議なもんでペロッと薄く削ぎ開いた眼球の表面は30分くらいで元通りにくっつき始めるそうです。くっついてるのが確認されたのであっさりリリース。

こういうのわたしはまじウケる(笑)と思える方だけど怖がりの人には厳しいかもしれない。みんな付き添いの人と来てた(手術室には入れない)。こっちの人ってちょっとした検診とかでも病院はパートナーが付き添うのが当たり前みたいな文化じゃないですか。まあわたしも彼氏いたら多分連れてきてたけど…秋に別れて今もシングルなんで…。ていうかレーシックは外科手術なので、帰りは車で誰かに迎えに来てもらうというのが法律で決まっているらしい。頼めばニコが車出してくれたと思うけどダウンタウンはパーキング高いし、クリスマス直前で道は激混みだし、駅の目の前なんだから電車のほうが早いくらいなんだよな。日本語でググるとどこのクリニックも「当日は自分で運転しないでください、電車やバスで帰れます」と書いてある。何度も「お迎えは来てるんですよね」と聞かれたけど別に車に乗り込むところを見届けられるわけではないので適当にあしらって一人で電車で帰った。手術直後は水の中にいるみたいにボヤけているものの、その向こうの風景は確実に見える!今までは裸眼で電車に乗るなんてありえなかったもん。近所の薬局で処方の目薬を購入し、保護サングラスをかけたままじっと目を閉じて過ごした一日でした。事前にオーディオブックをダウンロードしておいたのだ。2時間おきに目薬をさし、寝る時もサングラス着用。

ボロ家で隙間風がすごいので
家の中でもダウンジャケット

翌朝起きたらいきなり部屋の様子がウルトラHDでくっきりはっきり見えてナニゴトかと驚いた。本当に目が良くなっちゃった!夢じゃなかった。フォローアップの検診があり、傷は順調に回復していて視力は20/20といってもいいでしょうと言われた。20/20というのは慣用句的にパーフェクトな視力という意味で具体的な数値はわからない笑。適当だなあ。首から下だけシャワーして顔をジャブジャブ洗うことはできないのでノンアルコールのウィッチヘーゼル化粧水で拭き取るだけ。そしたら肌の調子が目に見えて良くなった!思わぬ副産物。アイメイクは最低でも一週間は控えるとのことでクリスマスはすっぴんで過ごすことになってしもうた。オフィスなど安全な仕事なら手術翌日から復帰する人もいるようですが、やっぱりすごく目が疲れる。わたしは年明けまで撮休なので仕事の心配はなし、3日目にはヨガに行ったり車で買い物に出かけたりと日常生活に戻りました。対向車のヘッドライトが全部星に見えた。これがハロ/グレア現象か…!数週間から数ヶ月で治るらしい。一番心配していた光に過敏になってしまう症状は今の所はなくて一安心。こうしてパソコン作業もできるようになりました。めでたしめでたし。

飛躍の一年の締めくくりにもうひと踏ん張りエイヤと勇気を出したおかげで目が良くなって、とてもいい気分で新年を迎えられそう。2020年はもっといい年になります。断言。

2019/11/15

Shine a Light 照明部を目指して

映像のキャリアを始めた当初から目標にしていたDGC カナダ監督協会のメンバーになりました。ちょうど一年かかった。今やっている番組では実質Key(代表)としてチームを引っ張ってきて、規約に沿って会員ステータスが出次第正式にKeyの称号がもらえるという話だったんだけど、これを辞退して次の目標を目指すことにした。今は照明技師になるために着々と準備を進めています。


一年間ロケーション部プロダクション・アシスタント=PAとして働きながら他の部署の仕事ぶりを見せてもらってもあまりピンと来る事がなくて、特にやりたいわけでもないけどこのままなんとなくPAの進化形態であるAD方面かロケーションコーディネーター方面に進むことになるのかなとまるで他人事のように思っていた。だけど今回初めてリーダーシップを取る立場になってあまりにもチームのレベルが低すぎてがっかりする事が多く、この分野で全くヤル気のない人たちと仕事をするのが突然嫌になってしまった。PAは業界の最底辺で誰もやりたがらない地味な雑用を引き受けるポジションなので、新人は仕事ナメてるし長くやってる子たちは完全にjaded=不貞腐れてしまっている。

わたしはどんなに惨めでつらい日だっていじけずにがんばってきた。他の子達が座って居眠りをしたり携帯をいじったりしている横でしゃんと立って、何かサポート出来ることがないかいつも探してる。毎日ワクワクしてるし毎日感動してる。それは一年前と全く変わらない。You're only one person away from your dream(たった一人との出会いで夢は掴める)と言われる業界で、いつか誰かがきっとわたしに気づいて掬い上げてくれると信じていた。まさかそれが10個年下の男の子だとは思いもしなかったけれど。

交通整理してたらみんなにカワイイと
褒められまくってご機嫌の千尋さん

わたしはこの番組のクランクインから参加していて、照明部の彼はたしか第3話くらいから合流してきた。面識ないし自己紹介もしてないのに一日に何度も無言でフィストバンプ(グーの手を合わせる挨拶)の手を差し出してきたり、すれ違いざまにスッと手を触ってきたりするので「やれやれまたわたしのファンか」と思っていた。Film Industryに従事するものはそうでない人には理解しがたい異常なスケジュールのせいで圧倒的にシングルの人が多く、みんな隙あらばと職場で出会いを探している。そして案の定こじれて仕事に支障が出ている。

気がつけばずーーーーっとこっちを見ている彼がついに話しかけてきたと思ったら!「チイチイさ、照明に来ない?絶対向いてると思うんだ」とな。いや誰かが呼んでるの聞いてわたしの名前知ったのかもしれないけどこっちは名前知らないし、向いてると思うってわたしの事なんも知らないだろうが!つーかどう見てもハタチか下手したら18歳くらいの赤ん坊のくせに何様なんだ?と思ってまじまじ見たらけっこう綺麗な顔をしているのだった…。その後も彼は毎日恥ずかしくなるくらいずっとこっちを見ていて目が合うと顎をクイッと上げて合図したりはにかんだ笑顔をくれた。一週間後くらいにまた「それで、いつ僕らと一緒に働きはじめられそう?」と聞いてきたので「身体が小さいし力がないから無理だと思う」と言うと彼は「身体の大きさは関係ない、ちゃんと鍛えてコツを掴めば重いものは持ち上がる。うちの女の子たちを見てみなよ」と言った。「中でも僕の親友の○○ちゃんなんかチームの要だし、badassでかっこいいでしょ。」

この一年間、数日助っ人したようなのも含めると10個くらいの企画に参加したけど女性の照明技師を見たのは今回が初めてだった。しかも3人もいる、しかも身長がわたしと同じくらい小さい子ばかり、しかもしかもその彼の親友ちゃんはアジア人。照明チームの半数が女の子というのは業界長い人に聞いても前代未聞だという。2019年になってもこの業界は圧倒的な男社会で現場にいるのはヘアメイクさんや衣装さんも含めて男だらけ。中でも照明は電気技師を兼ね、高電圧の熱くて重い機材を扱う部門なので伝統的に男の仕事と考えられてきた。それに、「白すぎるハリウッド」というのは本当で業界のダイバーシティの無さに最初は戸惑った。多民族の街バンクーバーで職員の99%が白人の職場なんて普通はありえない。露骨に外人扱いされるのも初めてだった。役者とそのスタントを除けば有色人種はいつも自分だけで、奇跡的にアジア人を見かけた日にゃポジション関係なくお互い駆け寄って「同胞よ…」と熱いハグよ。

だから照明部エースのアジア人女性の存在は衝撃的だった。自分と似た属性の人が活躍している姿はダイレクトに希望になる。You can't be what you can't see(見えない何かを目指すことはできない)とはよくいったものだ。いま映画やドラマでやっと白人男性以外の物語が語られるようになってきているのは本当に大きな意味のあることだと思う。女だから、肌の色が違うから出来ない仕事なんかカナダにはない。出来るか出来ないか決めるのは自分自身。たとえ人の何倍もの努力をしなければ認めてもらえなかったとしても、やってやろうと覚悟できたのはロールモデルがいてくれたから。そして1997年生まれ(※FBで調べた)の美少年が一点の迷いもなくまっすぐ目を見て「君は照明の道に進むべきだ」と言ってくれたから。


ロケで訪れた廃病院で彼にそのことを伝えた。エキストラを150人も呼んで騒がしい一日だったのに雨上がりの裏庭にはわたしたち二人だけ。今も空気の匂いを思い出す。「わたし照明を目指すことにした。君のチームの強い女の子たちが勇気をくれたのと、あとは君が背を押してくれたからだよ」と言ったら彼は「本当に?やったーーー」と踊りだした。わたしにはこの時の会話が全部『ラ・ラ・ランド』みたいにミュージカルに見えたよ。マジックアワー、これって恋かな?


彼はどうしてわたしが照明に向いてると思ったんだろう。最初はどうせ顔が好みだからでしょと思ったけど、もしもわたしの地道な仕事っぷりを見ていてくれたならそのほうがずっとうれしい。もしくは彼はわたしのゆく道を照らすため神に派遣された天使という説もある。彼は映画学校できっちり理論を学んでから自主制作やインディーズ企画を経て最近メジャーに入ったので10個年下でも仕事では大先輩で、照明のことを一から教えてくれた。将来はDOP=撮影監督になるのが夢なんだって。


照明技師になるには他のほとんど全ての部署と同じで必ずしも映画学校を出る必要はないけれど、メジャー作品で働くためにはまずIATSE 891というユニオンの承認を得てメンバー候補生になる必要がある。一定の実績を認められた正式メンバーに仕事を振り分けるのが基本で、もしもそれでまかなえない場合に候補生にお呼びがかかる事がある。今シーズンBC州のFilm Industryは空前の忙しさでどの部署も全く人が足りておらず、とくに照明は候補生全員が駆り出されてもまだ足りない状態だという。この忙しさはきっとそう長くは続かないから転部するなら今しかない。波に乗り遅れないように大急ぎでユニオン候補生になるための条件を満たさなければならなかった。必須資格の半分はDGCの加入条件と被っているため既に持っておりなんとかなりそうだったけど、筆記試験にはずいぶん苦労した。とりあえず課題図書をオーダーしてみたもののあまりの分厚さ難しさに怖気づいてしまいAmazonに返品するかどうか本気で悩んだ。なんとこの本$70もしよる。例の彼がまた謎の説得力で「君は一発で受かるよ。信じて」と言ってくれなければ多分返品してた。なんなんだあいつは…。

大判600ページ超で「ハンドブック」を名乗っていいものか


色の温度という概念や各種ライトの特徴などは楽しく読めたけど、極端な文系のわたしには電気配線、電力電圧電流の計算、というかそもそも電球が光る仕組みがサッパリわからなかった。全問選択式の試験はどうにかやり過ごせたとしても、この辺りをきちんと理解しておかないとブレーカーが落ちたり超高額な機材を壊したり感電したりと実際に危険なのでYouTubeで子供の理科のビデオを見て学んだ。しかし学年トップクラスの成績(※文系科目のみ)のガリ勉優等生だったのは過去の栄光で、長年の飲酒と加齢のせいか今はいくら勉強しても翌日にはすべて忘れてしまう。月曜から金曜まで一日に15時間から18時間肉体労働をしているのでたった30分間睡眠時間を削って勉強に充てるだけでも健康のリスクである。でもやるんだよ!なぜなら美少年をがっかりさせるわけにいかないからな。毎日少しずつ彼との距離が近づくのがうれしかった。二人だけの合図が増えた。照明部のみんなも協力してくれて暇を見つけては「チイチイこれは何だっけ?…違う!もっと勉強しなさい!」と練習問題を出してくれた。

仕事の合間を見計らってセットの隅で勉強

結局一ヶ月くらい猛勉強して試験に臨み、一発合格することができた。合格点は平常時は80点だけど今はとにかく人が足りないということで70点に下げられていた。わたしは82点でした。あぶねー。残りの資格を取り終えユニオンに申し込みのメールを送り、審査に受かれば候補生リストに上がり仕事のオファーが来る可能性がある。カナダでは基本的に時間がゆっくり流れているのでこのプロセスに相当な時間がかかるかもしれないと予測していた。2週間か、一ヶ月か。それまではPAとしてのんびり頑張ろうと思っていたら…!申し込み翌日から「今日、今から来れないか」みたいな電話がどんどんかかってくる!あわあわあわ。人が足りなすぎて選考期間をすっとばして応募者からも雇っているようだ。すでにブックされたPAの仕事を放り出すわけにもいかないのでその週のシフトはやりきり、翌週からの予定を全てキャンセルし照明のオファーに備えることにした。この業界は役者と監督とプロデューサー以外すべて日雇いベースで、スケジュールに関する契約書は無いのでたとえ企画まるごとの約束であっても明日明後日に辞めることは事実上可能である。当然チームには迷惑がかかるし、未経験からここまで育ててもらったボスの事を考えると心苦しくても、二度訪れるかはわからないチャンスを逃すわけにいかなかった。同番組の照明部にそのまま入って1997年生まれの美少年や強い女の子たちと働くのが夢だったけど、レギュラーメンバーも準レギュラーもがっちり決まってしまっているためすぐには難しいという雰囲気だった。しばらく外に出てみて経験を積み、タイミングが合えば合流できる可能性は十分にある。エピソード追加が決まって撮影は4ヶ月延長されることになった。

こうしてわたしはNancy Drew Season 1から離れることになった。ロケーション部の代表として自分の番組という意識もあったし、今までにないくらいクルーとの繋がりも強くなってきたところなので本当にさみしい。1997年生まれの美少年のせいで夢を持って、もっと彼のそばにいたい一心でがんばってきたのに結果離れ離れになってしまうなんて皮肉だね。

毎週水曜CWネットワークで放映中
観てね!

初めて仕事させてもらったDeadly Classの時からずっと一緒のロケーション部ファミリーともしばし(次の飲み会まで)お別れ。みんなもぼちぼち転部を目指して動き出してる。お互いもっと大きくなってまた一緒に仕事しようね。

もう片方のKeyのアリーシャ。まさに戦友。
ガチ喧嘩もよくしたけど。

だんご3兄弟

これからひとりぼっち、誰も知らない新しい世界でうまくやっていけるだろうか。自分の居場所、心地よい場所を離れるのは簡単なことではないけれど、そこから一歩踏み出すことで成長できるんだ。

それにしても1997年生まれの美少年とはいったい何だったのか?最後の日、泣きそうになるのをこらえながら「不安だわあ」と言ったら「大丈夫、君ならやっていける、I'm happy for you」だって。えー、それだけ?あれだけ思わせぶりな態度をしておいてなぜデートに誘ってこないのか…連絡もほとんどよこさないし(妙なところでプライドが高いというか常に優位に立っていたいので自分からアクションを起こすのは絶対にイヤ笑)。つーか10個も年離れてて恋とかないよね。単に「あの子ポテンシャル高いのにPAじゃもったいないな」と思っただけなのかな?いやあの視線の絡ませ方、脈アリエピソードの数々(割愛)で恋愛感情無いってことはありえないけど。じゃあもしも恋愛感情あったとしたらわたしはどうしたいのか?この先何十年も照明という同じフィールドで戦っていく仲間なんだから絶対に関係をこじらせたくない。だけどだけど彼の22歳とは思えない思慮深さと、映画の趣味の良さと、全てを見透かすような目と、謎の説得力と、白い頬と、ふわっとした細い毛と…しかし付き合えるわけでもないのに、つーか別に付き合いたくはないし、いったいわたしはどうしたらいいのかどうしたいのか…以下堂々巡り。

ずいぶん前から恋愛はパターン化していて、最近も2年付き合った元彼と「またこれか」という調子で別れたところだったので、自分にもまだこういう悶々と考えこんだり小さいことで一喜一憂したりする中3レベルの恋心があることに驚かされた。わたしの行く末をあっさり変えてしまった人。まったくなんてやつだ。

2019/07/09

仕事の鬼

4月の終わりから冬眠状態の続いたBC州film industryですが7月に入り徐々に息を吹き返し、史上最大に忙しい夏がやってくるとみんなが噂している。有能なPA=プロダクション・アシスタントの囲い込みはすでに始まっていて、わたしも7月の終わりからクリスマス休暇挟んで来年初春まで、3月にやったPilot以来のshow-call(シーズン通しで働くレギュラーメンバー)でブッキングされております。現場実績が150日間に届けばユニオンの正式メンバーになれる。いま110日くらいなのであともう少し!


現場職はプロデューサーや監督やDOPなど要するに最重要人物とケータリング業者以外はみんな日雇いまたは週単位での契約なので、偉い人でも平気でプロジェクトの最中にバケーションを取ったり即日クビになったりする。全員フリーター状態で万が一の時はMSP(国保)やEI(失業保険)など国の制度を利用するしかない。しかしユニオン=労働組合に所属すれば普通の会社員のように社会保険やリタイアメントプランに加入することができる。給料は同じ、フリーランスなのも同じで仕事が保証されるわけではないけど、優先的に仕事を振らないといけない決まりがあったり会員だけが閲覧できる先取り情報がある。ユニオンは部署ごとに5つあって加入しないと仕事が始められないポジションもある一方(インディーズ企画やCM除く)、平のPAについては完全に個人の裁量に任されている。実際はPAでユニオンに入ってる人はほとんどいない。なぜならわざとハードルを高くして入りづらくしてあるのでとにかく面倒で会費も安くないから。しかも苦労してやっと正式メンバーになれたとしてももし別の部署に転部したくなった場合にはまた別のユニオンの加入条件をクリアするためにイチからやり直しになる。メンバーシップは部署を移っても無効にはならないし複数のユニオンに所属することもできるがそれぞれ会費がかかる。

ユニオン志望者が提出する日誌(一日でも書き忘れたら無効)
今どき手書きの日誌って嫌がらせとしか思えない

PAが所属できるDGC: Directors Guild of Canadaは監督、AD、コーディネーター職のためのユニオンなのでこの部門でキャリアを積みたいのでなければ加入する意味がないと考える人が多い。だいぶ上の方まで昇進してやっと他の部署(照明とか音声とか衣装とか)の見習い一日目のお給料に届くなど最も報われない部署なのもあり、エントリーレベルポジションであるPAを足がかりにして転部しようとしている人がほとんどなのが現状。しかし短期間で転部が決まるラッキーなケースは稀で、なんだかんだで2年3年とPAを続ける羽目になり結局ユニオンに入っておけばよかったと後悔する人は多い。わたしも今の部門に留まるつもりはもともと無かったけど、最初からDGC加入を最初の目標にしてこつこつやってきた。とりあえず目に見える目標があるとがんばれるから。必要な資格は全部最初にまとめて取ってしまい、以来ほぼ途切れないペースで仕事できているので最短期間でメンバーになれそう。もともと人の紹介で業界に入って(どの部署も紹介がないと入れないのだが)、奇跡的な縁でバンクーバーのこの分野で一番名の高い先輩達と一緒に仕事をさせてもらっているので、ユニオンに入ることで今までお世話になった人達に対して一種のけじめというか本気だということを証明したかったのもある。まあ保険でレーシックしたい気軽に歯医者や整体に行きたいというのが最大の志望理由なんだけど笑。転部するまでの間所属できる機関があると安心だし。

PAって具体的に何してるの?とよく聞かれるんだけど「言われたことを何でもする」としか言いようがない。大きく分けるとPrep Wrap crewとShoot crewの2つがあり、わたしは主にShootをやるけどたまにPrep Wrapも手伝うことがある。Prepは前日までにロケ地の下準備をするチームのことで、Wrapは撮影後に原状回復するチームのこと。ロケ地のオーナーとの連携の関係もあり同じ人達がやった方が話が早い。Prep WrapはShootと給料同じなのに圧倒的にラク。Prepは朝7時に集まって養生を済ませたら後は大道具さんなどが働いてるのを見守り、機材トラックのために借りたスペースを違法駐車に取られないように監視し、たまに進行状況をオフィスに報告しつつ勝手に休憩を取って終わったら帰る。Wrapは掃除がメインだけど他の部署のものは触ってはいけない決まりだし細かいところは清掃業者に委託するのでみんなが働くのを見てるだけ。一日の大半を座ってボーッとするか雑談するかして過ごす。大してやることもないので最大で12時間、運が良ければ4時間くらいで帰れることもある。15時間立ちっぱなしで心身すり減らして働いた時と同じ日給(本当は8時間以下は給料違うけどほぼ必ずおまけしてもらえる)。なのでこれを専門に活動しているPAもいるけど、スタジオ撮影の時は出番がないので仕事にあぶれやすい。また他の部署との関わりが最小限になるので出世は遅くなる。

歴史的建造物を傷つけないよう細心の注意を払う

撮影本番Shooting crewの時はPAは誰よりも早く現場に着き誰よりも遅くまで残るので15時間以内に終わることはまずありえない。15時間を超過すると残業代が出る。最低でも集合30分前に現場にいるのが暗黙のルールで通勤含めると拘束時間は17時間くらい。Show-callの時はこれを週5日か6日×3ヶ月〜半年やる…!現場に着いたらまずケータリングで朝ごはんを食べてからクルー駐車場の案内をする係と設営係に分かれる。駐車場/ サーカス(楽屋や事務所トレーラーが並ぶベースキャンプ)とセットは別の場所にある場合が多いのでロケバスで移動。

サーカスの様子
こういうのもPAが設営する

ゴミ箱とテントを一通り設置し終わったら持ち場に割り振られ、基本的には警備員か清掃員か交通整理係員のようなことをする。PAを取りまとめるKey PAはすべてのエリアに誰か配置し、そこで何か問題があった時には無線で指示を出す。よく全員の名前と担当エリア覚えられるなといつも感心する。肝心な時に担当の者がいないと困るのでトイレや軽食などで持ち場を離れる時はspell offといって代理係に一時的に持ち場を任せ、用事が終わったら速やかに戻る。実際に撮影が行われるセットに近い場所にレギュラーメンバーを、遠い場所にday-callと呼ばれる補欠メンバーを充てることが多い。カメラが回っている間にクルーに静かにするように促したり、警察と協力して通行人や交通をストップしたり、誰かが勝手にドアを開けて入ってこないよう見張ったりする。今はほとんどデジタル撮影とはいえショットに必要ないものが写り込んだり雑音が入ってしまうというような初歩的なミスは許されない。今は何をしていて次にどういうショットを撮って何が起こるのかは無線で実況されるので常に注意をはらい、わからない時は聞く。無線での応答は大勢のクルーに聞かれていて直接評価に関わり、連続でトチると干される。逆に効果的な応答ができれば一目置かれて補欠メンバーからレギュラーに、レギュラーからAD見習いにと昇進できるチャンスでもある。ジョークはいいタイミングで言えれば好印象だけど汚い言葉を使ったら干される。このマイクパフォーマンスが英語が母語でないわたしにとってはとても難しい。 独特の専門用語にはすぐ慣れたけど。

"Copy that=了解"

あとはクルーに頼まれたことを何でもやる、一時的に荷物を見張ったりお水を配ったり無線でロケバスを召喚したりパイプ椅子や机を手配したり、冬ならプロパンヒーターのリクエストが多い。備品や撮影機材は高価なので絶対に目を離してはならない。設営と撤収はひたすら力仕事だけどその間は割とのんびりできる時間もある。なので休憩時間はない。身体や気持ちが辛いときはKey PAに相談して個別に休憩をアレンジしてもらう。食事はセルフサービスの軽食ステーションに加えて朝食、サンドイッチ、昼食、夜食の4回ケータリングサービスがあり、めっっっちゃくちゃ豪華。だって出演者が食べるのと同じメニューだもん。しかしPAは持ち場に持ち帰って仕事をしながら食べる。座って食べられることはほとんどない。雨や雪が降っていても同じ。


PAは業界の最底辺であり、とにかくキツいし全然かっこいい仕事ではないけれどわたしたちがいなければ現場は回らないので偉い人も同じチームの仲間としてリスペクトしてくれる、偉い人ほどリスペクトしてくれる。フリーランスの仕事の奪い合いは競争が激しく、たとえば6月は仕事待ちをしているPAのリストに300人が書き込んでいた。わたしは仕事を始めた最初の月以降そこに書き込んだことがない。失業保険があるので別に無理に働かなくてもいいと思ってるのと笑、ソリッドなコネがあるのと、評判が良く勝手にみんながあちこちで推薦してくれるから。なぜ評判が良いかというと仕事をナメてないからじゃないかな?たぶん。あとよく言われるのはいつも機嫌が良さそうだから居ると現場の雰囲気が和らぐ、とかです。マスコット的な扱いなのね…。

交通整理をするのにはもちろん資格が必要です
これもユニオン参加条件のひとつ
撮影中はお静かに!みんなよくそんなに喋るネタが
あるなっていうくらいオシャベリだから大変

弁当を配る係だった時。
頼まれたら何でもやる

わたしがこれまでに関わった仕事を紹介します。数日手伝っただけの企画除く。Show-callで映画をやるとPAでもエンドクレジットに名前が載るんだけどまだやったことないのよ。これは次の目標で、今年はもう全部スケジュール埋まってるので来年中に実現したい。ドラマと映画はどっちが偉いとかは無いです、給料も同じだし。どの作品をやるかよりも誰と仕事するかどうかの方が大事で、基本は人に誘われるままくっついて行くだけ。PAはもちろんのこと現場で働くクルーの99%はクリエイティブな決定権を持たずただ言われたことをやるだけなので、この作品がやりたいとかは特に無い。しいていえばロケ地が近い作品がいいなというくらいかね。大自然を舞台にした話とかだとやっぱ遠征が多くなるんで都会の話がいいな、みたいな。しかし正直割に合わない仕事でもそこで出会った誰かの縁が次に繋がったりするので基本的にお誘いは断らないようにしている。複数オファーがあった時は先着順。

Deadly Class Season 1 初仕事でいきなりshow-callだったので第二話以降ほぼすべての日程に関わった。わたしの原点であり特別な作品。現場の様子は前にブログに書いた。原作ファンからもすごく評判が良かったのに熱い声援もむなしく打ち切りが決定、Season 2に進むことはできませんでした…。期待を込めて大道具や衣装など全部倉庫に取ってあったみたいなんだけど残念。

See Season 1 今秋ローンチするAppleの動画配信サービスの目玉作品。ジェイソン・モモア主演。BC州の歴史上最大規模の予算をかけたといわれる超大作。悪天候&気温氷点下の山奥で過酷なロケが続きレギュラーメンバーは何ヶ月もホテル住まいだったらしい。わたしは3週間ほど働いたけど膝を痛めてしまい離脱。負傷者続出、極寒の山を生き抜くためエネルギーが必要なのにケータリングが不味すぎて何も食べられないなど悪夢のようなショーであった。熊除けスプレーも渡された。

遠くて寒くて暗くてお腹空いて泣きそうなわたし
in トイレ

Republic of Sarah Pilot 『(500)日のサマー』のマーク・ウェブ監督と一緒に仕事ができて感無量。二週間、全日程遠征でBC州津々浦々旅をしながら撮った。馴染みのチームと一緒だったので超楽しかったしけっこういいホテルに泊まらせてもらって修学旅行気分。田舎町Agassizで撮影したときの様子が地元ニュースになった時の記事→こちら。パイロット回というのは配給会社にプレゼンするために製作するドラマの第0話で、これを気に入って買い取ってもらえばシーズン1を撮ることができる。買い取ってもらえなければお蔵入り。お金にならない企画は日の目を見ないシビアな世界。


Coffee and Kareem Netflix製作のアクション/コメディ映画 。夢にまで見た映画の現場はドラマの現場と全く同じでした。合わせて一週間ちょい助っ人しただけだったけど爆発やカーチェイスが多くて面白かった。『ハングオーバー!』で歯科医役だったEdさん主演。役者の本名と役名はわたしは必ずimdbで予習するけど普通はPAはそこまではしないと思う。

Beverly Hills, 90210 オリジナルキャストによるリブート企画で90年代の青春が戻ってくる!ノースバンクーバーで撮影真っ最中。PAで少し参加してからパパラッチ対策本部に引き抜かれた。パパラッチやファンが出待ちをするような番組は初めて(ジェイソン・モモアが出てるSeeはロケが僻地すぎて追っ手も来れなかった)。少し目を離すとすぐフラフラどっかに行ってしまうキャストやそのご子息やワンコを守るため走って追いかける日々。


今後はKey PAに挑戦してさらにTAD(AD研修生)、ゆくゆくはADを目指すことも可能といえば可能なんだけどわたしは平のPAに留まって転部活動に集中するつもりです。そして35歳までに年収$100k=1000万円稼げるようになる!しかし自分が正確には何歳なのか忘れちゃったんだよね笑。たぶん30歳から33歳の間だと思うんだけど…。

2019/06/22

ゆっちとハワイに行った

浮き輪はRoss Dress for Lessで購入

高校からの大親友でたびたびブログにも登場しているゆっちと、ずっと前からやってみたいと話していた海外待ち合わせ企画をついに実現させハワイに行ってきた。大学卒業旅行の時にも来たんだけどね(厳密に言うと卒業留年だったのだが話すと長いからここでは省く)(後でちゃんと卒業できました)。今回は大人になったので金にモノを言わせて一週間豪遊さ。レンタカーを借りて運転もした。9年前はお金もなかったし英語も話せなかったし車の運転もできなかった。ずいぶん遠くまで来たね。大人になるって最高だ。わたしは10代の時より20代の時より30代の今が一番楽しいです。

年を重ねると朝起きるのが早くなる笑。ゆっちはいつのまにかジョギングオタクになっていてわたしはお酒をやめて眠りの質が向上したので二人揃って朝は6時くらいからシャキシャキ活動していた。これが大正解で一週間通して混雑を回避しまくることができた。みんな意外と起きるの遅いんだね。ダイヤモンドヘッドも開店直後に登ったわよ。普段からジョギングやジム通いをしているゆっちには楽勝でも運動が大嫌いなわたしにとっては険しい道のりでした。サッと通り雨が降ったせいで虹が出て、素晴らしい眺めに出会えたのでがんばった甲斐があった。

遭難しようがないカラフルなわたし

ゆっちはTPOに合ったオシャレが得意




たまたま土曜だったので麓の公園でファーマーズマーケットが開催されていた。ダイヤモンドヘッドの入場料やこのファーマーズマーケットを始めハワイではお会計現金のみというところが割とあった。カナダではクレジットカードで払えないものは無いのでアメリカも当然そうかと思い一切米ドル用意してなくて、ゆっちにもいらないからと言ってあったので参っちゃった。結局わたしが持っていたなけなしのカナダドルとゆっちが持っていたなけなしの日本円を免税店で両替してもらいなんとかしのいだ。アメリカ本土はまた事情が違うのかもしれないけどハワイは要注意だな。

クレジットカードOKだった屋台のスムージーを飲んでいよいよ暑くなる前にとっとと退散し、エアコンのきいたお部屋でお昼寝。


今回は噂の民泊サイトAirBnBでワイキキのど真ん中にある高層コンドミニアムを予約した。一泊CAD$150くらいでさらに清掃料だ手数料だが入るのでそんなには安くないけど、立地の良さと駐車場込みなのを考えるとまあ納得。ホテルと違って毎日の清掃は入らないので二人で手分けしてサッサと軽い家事などしてプチ同居気分で楽しい。キッチンもついててほとんど毎日自炊してかなり節約になった。ワイキキ物価高すぎ!少し離れるとそうでもないんだけどねえ(金にモノを言わせるんじゃなかったのか笑)。ゆっちが日本から美味しいお米やそうめんや調味料を持ってきてくれました。買い出しは主に庶民派スーパーのSafewayで、ちゃんと会員カードを作って会員価格で買えたぞ。ゆっちは高校生の頃から料理やお菓子を作るのが大得意だけどわたしはカナダに来る前は包丁を握った事すらなかったね。

やっぱアメリカといえばステーキでしょ
2−3人前で$11くらいだったお肉。

ハワイ名物ガーリックシュリンプ
エビがちょうど特売だった

おいしいお米を炊いて、

スーパーで買ってきたポケの具を載せてポケ丼。
具だけ売ってくれるのすごくいいな。ゆっちは糖質オフ中

オアフ島は卒業旅行の前にも何度も訪れたことがあったけど、車があると楽しみ方が全然違う。もうビーチというビーチは制覇して一番気に入ってリピートしたのがカイルアビーチ。見てくれこの青い海、白い砂浜!




バンクーバーでありがたがってたビーチとは一体何だったのか…。まあ比べるのもおかしいし、あるものに感謝して楽しむしかないんですけど。ここは整備されたビーチパークなので駐車場が3箇所ありトイレやシャワーも完備。自然な木陰もあって最高です。監視員さんもいるし浅くて波も穏やかだし岩っぽくなくてぼーっとするのにピッタリ。ぼーっとしすぎて二人とも日焼けヒリヒリになっちゃった。いたた。

そこから全米美しいビーチ選手権第一位に選ばれたというラニカイビーチにも足を伸ばしてみた。カイルアビーチから15分ほど住宅街をてくてく歩きます。近隣住民をリスペクトしてお静かに。



民家の隙間からこの光景が見えた時はもう鳥肌ものであった。


ちゃっかりインスタ映えを狙ったコーデのゆっち
TPOわきまえてますね (インスタはやってないらしい)





ここは天国か!少し前までは本当に知る人ぞ知るという秘境ビーチだったらしいがインスタグラム等で有名になり最近は混んでるらしい。要するにカイルアビーチの隣のビーチなんで水や砂浜の質はほぼ変わらない。ただしこちらのほうが風景がひらけていて午前中は人がほとんどいないのでまさに絶景を楽しむことができるし、写真を撮るのにはいいという事かな。駐車場もトイレもシャワーもゴミ箱も何もない上に一切日陰がないので長居するのには向かないかも。サッと行って写真だけ撮ったらカイルアビーチに戻るのがオススメ。

カイルアの魅力はビーチだけじゃない。車で5分くらい走ってカイルアタウンに出ればかわいいお店や美味しいものがいっぱい。行列ができるパンケーキ店のブーツアンドキモズもチェックしたよ。ぶっちゃけハワイの有名パンケーキ店は東京にも支店を出していていつでも食べられるらしいですがここんちはこの一店舗だけでプレミア感がある。朝9時ちょい前に着いて20分待ちだった。持ち帰りもやってるらしい。



噂のマカデミアパンケーキは確かに並ぶ価値のある美味しさ。ふわっとしていて甘すぎなくていいぞー!でも二人で1オーダーで十分。わたしたちは甘いのしょっぱいのと三角食べするのが好きなのでオムレツも頼んだ。こちらもチーズがとろけて美味。お客さんの8割くらいは日本人だったけど店員さんがゆっくりわかりやすい英語で根気強くコミュニケーションを取っていて好印象。ハワイは観光産業で成り立ってるからかバンクーバーに比べたらお店でもレストランでも接客がめちゃくちゃ丁寧だと思った。親切にしてもらったらちゃんとサンキューって言おう!日本の人があまりにも失礼なんで驚きました…。

別の日はノースショアのハレイワを目指した。車で1時間強、オアフ島横断の大冒険。緑の山に圧倒されたり茶色い畑の隙間を抜けたり、急に雨が降ったかと思えばまた晴れたりと、田舎道をドライブするのは楽しい。バンクーバーで運転するのはただただストレスで楽しいと思ったことなんか無かったけどハワイで初めてその感覚がわかった。



North Shore Marketplaceに車を停めてアサイーボウルを食べた。朝から全力で暑い日にピッタリ。Coffee Galleryというカフェ、いかにも地元の人がダラダラするスペースといったかんじでいいね。このモールけっこういろんなお店が入ってて、限定商品を売っているpatagoniaでゆっちは甥っ子姪っ子のお土産など爆買いしてました。カナダは旅行の後にお土産を渡す文化がないのよ。本当に大事な人が喜びそうなものがもしあったら買って帰るくらいで、親戚友達みーんなにとか職場にバラマキだとかは無い。てかアメリカとカナダはほとんど売ってるもの同じで為替を考えるとカナダで買ったほうが何でも安いし。一応彼氏にはコーヒー豆とかなんかちょこちょこしたものとか買ったけれど。

ハレイワはショッピングとガーリックシュリンプとシェイブアイスの街。名物のマツモト・シェイブアイス、の真向かいにあるアオキズはほぼ同じものを同じ値段で出しているのに待ち時間少ないし、このプラスチックのスタンドが便利で手がベタベタにならないし、カラフルなイートインスペースがかわいいしでオススメ。わたしのアイスは抹茶、生姜、リリコイ(パッションフルーツ)でシブい彩りなので写真はゆっちのアイスと撮った。


見た目より味重視
自家製生姜シロップが辛くて美味しい

アオキズの看板付近にたくさん生息していたミニ恐竜

一日一ビーチ以上しないと気が済まないので商店街を抜けたHaleiwa Aliʻi Beach Parkを一応覗いてみたけどカイルアビーチの美しさを見た後だとがっかり感が否めない…。岩場なので泳ぐのもこわい。シュノーケルするのにはいいのかも?

十分美しいビーチなのに…
海評価ハードルが上がりきっている我ら

しかしここは野生のウミガメに会えるので有名なビーチらしい。わたしたちもバッチリ見られたよ!なぜ発見できたかというとサマーキャンプの女子高生たちがやってきて引率の先生が指導しているのを又聞きしたからです。一瞬水面に顔を出した程度なので写真は撮れなかったけど縁起が良いね。鶴は千年亀は万年。

早起きしすぎてワイキキに戻ってもまだ早いような日はハッピーアワーを攻略したよ。参考にしたのは→ハワイのハッピーアワー時間割 このサイト本当に便利で旅リサーチに大活躍でした。



ゆっちのビールは$3でわたしのノンアルコールカクテルは$8とはこれいかに…。まあ世の中そういうもんか。ワイキキのど真ん中にできた新しめのモールInternational Market Placeすごくキレイでおしゃれで日本食スーパーも入って便利なのになぜかいつも空いてた。なんで???みんな行ってあげて!3階のレストラン街の店全部オープンエアだしハッピーアワーもやってて使い勝手良いぞ。休憩できるおしゃれな椅子もあちこちに置いてある。

もともとあった大木を活かした
ツリーハウス建築

最後の夜は豪華な外食。International Market Placeに入ってるハワイ料理Eating House 1849 by Roy Yamaguchiへ。バーでちょい飲みしてからテーブルに移るのがスマートさ。もしくはその逆でテーブル→バー。まあ酒飲まないからもうこういう作法意味ないけど…。




大好物の帆立を食べた時はさすがにちょっと白ワインが飲みたくなったけど、目を閉じて二日酔いの地獄を思い出して欲望をコントロール。炭酸水で乾杯。ゆっちと東京で飲み歩いた日々が懐かしい。飲まなくなってもわたしはわたしのままさ。これだけ違う環境で暮らしてても二人はずっと変わらず友達。

最終日はお昼前にAirBnBをチェックアウトし、アラモアナセンターの駐車場に停めた車をロッカー代わりにしてそこを拠点に動いた。何度も言うようだけど車は本当に便利!ゆっちのフライトが午後発でわたしのフライトは夜発だったので一緒に軽くランチをしたら駐車場でサラっとお別れ。ひとりアラモアナビーチを歩きながらゆっちが「うちら死ぬまでにあと何度会えるかねえ」みたいな事を言っていたのを思い出してプチ泣きした。カナダにも友達いるけど、この先何があってもこの子がいたら乗り越えられるとか、逆にこの子のためならできないこと一個もないと思える友達はやっぱりゆっちしかいない。まあ本当はできないこと一個だけあって日本に住むことなんだけど…。ゆっちカナダに引っ越して来ないかな笑。



海辺でKindle読んでたら2020年の選挙はバーニー・サンダース氏を応援してほしいという支援者に話しかけられた。詳しく話を聞きたかったのにカナダ人だから投票はできないと言った途端にすごい勢いで去っていってしまってシュン。あと咄嗟にI'm Canadianという言葉が出たことに自分で驚いた(国籍は今は日本です)。ハワイの地元の人にどこから来たの?と聞かれたら少し返答に困る。I'm originally from Tokyo but currently live in Vancouverが正確か。


オアフ島はゴールデンウィーク後でも本当に本当にどこに行っても日本人ばかりで、車で遠出してもやっぱり日本人ばかりで、ビジネスも中国人でも韓国人でもなく日本人をピンポイントでターゲットにしているところがユニークだと思った。アラモアナビーチは結婚式の写真撮影に人気みたいで等間隔に並んだ新婚カップルが指示されたポーズをはにかみながら決めていた。多分みんな年下だよな。ああいうカップルってどういうセックスしてるんだろう。31歳にもなると同級生の結婚出産ラッシュもさすがに一段落し、なんなら離婚してる人も再婚している人もいる。うちらが一度も結婚してない間にすでに二回も経験してる人がいるとかすごいな。わたしは自分で掴んだフリーダムに永遠の愛を誓ったので病める時も健やかなる時もこれを抱きしめ歩んで参ります。

健康で独身で子供もいなくてお金にやっと余裕ができてフリーランスだから時間の融通も利いて、カナダのビザの心配もないしいま人生で一番自由な状態で、でもそれがいつまで続くかなんて保証はどこにもないから、今のうちにもっといっぱい旅するべきだとつくづく思った。次はどこに行こうかねえ、ゆっち。