2018/12/20

Keep it Rollin' ちひろを止めるな!




PA(プロダクション・アシスタント)として初めてお仕事させて頂いたドラマ、Deadly Classが無事クランクアップしました。フリーランスの世界、最初はこれだけで食べていくのは難しいだろうからパートタイムの仕事でも見つけようとか考えてたんだけど、フタを開けてみたら超大忙しで3ヶ月間働き詰めだったよ。ユニオンの規定があるので一応毎日6時間くらいは寝れるんだけど残りの18時間は全部仕事と仕事場への移動時間という生活。しかも電車やロケバスの移動中とトイレの時以外は立ちっぱなし。もう人生で一番疲れた。でも人生で一番幸せな3ヶ月間でした。未経験の新人が最初にやるプロジェクトでshow-call(シーズン通しのフルタイムポジション)をオファーされるのは極めて珍しいことらしい。今までのフリーター生活で培った地味なスキルを高く評価されてもはや無双だった。The best PA ever(史上最強のPA)とか言われて他の子たちと比べて完全に特別扱いだったし。仕事においてここまでベタ褒めされたり熱烈に愛されたことがかつて無かったので最初からかわれてるのかと思った笑。ずいぶん遠回りしたけどやっと自分がいるべき場所が見つかったよ…。しかも人気コミックのドラマ化で、なんと『アベンジャーズ』のルッソ兄弟プロデュース!配給はアメリカのソニー・ピクチャーズ!!と最初からこんな大きい作品のために、第一線で活躍する一流のクルーと一緒に仕事することができて本当にラッキーでした。英語だけど予告編だけでも是非見てくれ〜


時は1987年。荒廃した街で未来も行き場もない若者たちが辿り着いたのは暗殺者育成学校、Kings Dominionだった。殺し合い、騙し合い、ドラッグにセックス、そして少しの友情…学園映画みたいに美しくなんかない、血まみれの青春をサバイブできるのは果たして誰か?  

現場でわたしたちがびしょ濡れ泥だらけで地道に手作りしたものがこんなかっこよく仕上がるなんてすごいぞ!この規模のドラマになると現場クルーだけで毎日120人くらいいる。いろんな部署のコラボレーションで作品が出来上がるのです。部署ごとにさながら部室みたいなトレーラーを持っていて、みんなで給食(無料)を食べて、夜中に出る夜食やコーヒーの屋台(無料)に並んで、○○部の誰と誰は実はデキてるらしいみたいな噂とかもあり、けっこう待ち時間が長いので延々だべったり、みんなで雨の中をうおーーーーっと走ったりとか、限りなく文化祭っぽかった。学園モノだから制服姿のキャストと大勢のエキストラがセットをうろうろしてて本当に学校みたい。キャストも腰が低くてフレンドリーな人ばっかりでクルーと一緒になってふざけてたね。長くPAをやってる子やベテランのクルーも「こんな仲良しな現場滅多にない」って言ってた。いまバンクーバーで撮ってるドラマや映画他にもいっぱいあるけど、すんごい険悪な雰囲気のところもあると聞くしなあ。

撮影のほとんどは郊外にある2つの巨大スタジオで行われた
室内をクレーン車が走れるくらい広い 。迷子注意
なんの変哲もないブルースクリーンでございます
セットに動物がいる日もあった
鶏、犬、ヤギ、アルパカなど
これはgrip部のマスコット犬アルピーくん。
カナダ人って普通に職場に犬を連れて来るよね
ダウンタウンでやった昼間のロケ
ロケはスタジオ撮影より緊張する
これもダウンタウンのロケ、たしか徹夜だった。
月明かりを演出するこの照明は…
こうしてヘリウムガスで浮くようになっているのです。
クレーンと使い分け。
精神病院の廃墟でのロケ。
撮影以外では入れない場所
もちろん火薬類取扱免許を持っている
特殊効果部の練習風景
笑っちゃうような豪雨の日も撮影決行
夕食にハンバーガーが出た数時間後に
夜食のハンバーガー屋台が来た奇跡の回
主演のベンの誕生日
楽屋トレーラーも風船だらけ。
最後にもらったプロダクションからの記念品、
校章入りスウェット上下
そういえば髪をピンクに染めたんですよ
ロケーション部飲み。
みんなハタチそこらだからめちゃくちゃ飲む
クラブを貸し切って盛大な打ち上げ
わたし含む数名酔っ払いすぎて追い出された笑

夢みたいに楽しかったな…シュン。毎日寝てる時以外ずっと一緒にいたこのメンバーが全く同じ組み合わせで集まることはもうないんだと思ったらすごくさみしい。まるで卒業みたい。わたしを「右腕」と呼んで大変かわいがってくれたボスが最後の日に「今までよくがんばってついてきてくれたね。I'm so proud of you. 君はこれからこの業界でどこまででも行けるよ」と言ってくれた。彼は6コも年下で、若いせいか少々だらしないところがあり最初はソリが合わなかったんだけど、いつからか親のような目線でわたしになるべくたくさんのことを経験させてくれようとしてくれるようになった。年下のくせにな!彼やそのまた上の大ボスも是非また一緒に仕事しようと言ってくれているし、他のPAとのコネクションもあるし、ユニオンのメンバー候補生にも認定されたので、今の部門で食いっぱぐれるということはないんじゃないかな。

例年12月から3月にかけては業界自体が「冬眠」に入ると言われているんだけど今年は繁忙期が来るのが遅かったためちょっと事情が違うかもしれないらしい。単発の仕事day-callを拾うこともできるんだけどしばらくゆっくりしようかと思って。クリスマスだしお正月だし。1月の終わりにボスが狙っている映画の仕事があるのでもしそれが決まればついていく予定。銀行員時代の2.5倍のお給料が出て、且つお金使う暇が全く無かったせいでまとまった貯金があるんだけど、旅行するかオンボロ中古車を買うかで悩んだ結果今回は車を取ることにした。業界でやっていくのにやっぱり車が不可欠すぎるので。この仕事を始めてライフスタイルががらっと変わった。まさか自分が車を運転することになるとか、仕事を好きになれるとか、お金の心配をしないで暮らせるようになるなんて3ヶ月前には想像もつかなかったことだもの。子供の頃からずっと戦ってきた「何者にもなれない」という不安とやっと決別する時が来たようだ。


Deadly ClassはアメリカSyFyチャンネルで1月16日から放映開始です。将来的に日本の動画配信サービスで視聴できるようになったりとかしたらいいんだけど。本当にがんばって作ったわたしたちの青春の結晶なので、多くの人に楽しんでもらえることを願っています。

…とこれを書き終わった瞬間にちょうどボスからメールきて1月の仕事がほぼ確定。なんというタイミング笑。もう少し休めるかと思ってたんだけど、呼ばれちゃしょうがねえ。止めるな、止まるな、let's keep it rolling. 

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