2013/12/21

NY旅行記 前編

去る12月11日から15日まで、三泊四日でニューヨークに旅行してきました。長文注意。

Day1

オープニング番(午前6時出勤)で仕事してから夜便でNYへ。虚弱体質のわたしにとってはこれだけで殺人的スケジュールである。フライトは約4時間。バンクーバーとNYに3時間の時差があるとは知らなかった。全然寝てないじゃないかー!JFK空港からダウンタウンへはバスで1時間弱。噂には聞いていた渋滞に辟易。電車にすればよかったなあと少し後悔するも、後で電車に乗ったらやっぱりバスでよかったと考え直す。

ホテルに荷物を預けて、まずは景気づけに牡蠣とシャンパン。


212-490-6650
89 E 42nd St, New York
営業時間 月~土 11:30-21:30
日曜定休



The world is my oysterという慣用句がある(実際レナ・ダナムがラジオで言っていた)。直訳すると「世界はわたしの牡蠣」。シェイクスピアの引用で、自分の手で牡蠣をこじあけて真珠を手に入れてみせる、世界は俺の思いのままだ、という意味。なので牡蠣は縁起のいい食べ物だ。欲張ってプリプリの生牡蠣盛り合わせを平らげる。続いてカキフライとビール。涙が出るほどうれしくて美味しかった。NY着いて数時間ですでに幸せの絶頂。しつこいようだけど今年は本当に苦労が多かったので、幸せがジンジン心に沁みる。奪い返した自由。世界は思いのままだ。

1913年オープンのこの歴史あるオイスターバーはGround Centralという駅の構内にある。ランチに遅しディナーに早しの微妙な時間だったのに激混み。混んでいるというとちょっと違うな、活気がある、だ。広ーい店内に大勢のスタッフがテキパキ働いていてちゃんと待たずに座れた。カキやチャウダーをつまみにサクっと一杯ひっかけているおひとりさまが結構多い。通勤途中にこんな使い勝手のいいお店があったら毎日誘惑に勝てないだろうな。レトロな内装や雰囲気も最高。映画の中にいるみたい。



4日間の滞在で素敵なものをたくさん目にしたけど、実はこのGround Central駅が一番気に入った。ただの駅なんだけど何か新しいこと、面白いことが起きそうな高揚感が充満している。『エターナル・サンシャイン』『ステイ・フレンズ』『キミに逢えたら!』など好きな映画に繰り返し出てきた場所。高い高い天井のアーチをはじめとした建築様式や、たくさんの人がひっきりなしに行き交う様子は圧巻で、いつまで眺めていても飽きない。急にフラッシュモブ(ネットなどで知り合った有志が公共の空間でゲリラ的に行うダンスパフォーマンス)が始まったら…と想像してワクワク。

テンションアゲアゲのまま(ここまで書いて気づいたんだけどわたしの日本語ボキャブラリはアップデートが必要だ)、エンパイアステートビルディングに昇ってみた。高いところ大好き。


言うまでもなくNYを唄った歌はそれこそ数え切れないほどあるのだが、わたしにとってはやっぱりアリシア・キーズとJay Zのアレなのよね。すまんねミーハーで。昔はニューヨーク♪の部分しかわからなかったけど、今なら歌詞が聞き取れる。
New York, concrete jungle where dreams are made of / There's nothing you can't do / Now you're in New York / These streets will make you feel brand new, the lights will inspire you / Let's hear it for New York...(ニューヨーク、夢でできたコンクリートジャングル/不可能なんてひとつもない/ニューヨークのストリートは新しい気持ちをくれる/街の明かりがあなたをインスパイアする/ニューヨークに喝采を送ろう) 
この曲を聴きながら想像していたNYという街に、ついにやって来た。当たり前だけどエンパイアステートビルディングにいるのでエンパイアステートビルディングは見えない。クライスラービルは見えた。NYといえば、『パラサイト・イヴ』っていうプレステのゲームも思い出す。1998年だって。ひえー15年前。

展望台は外にも出れるようになっているのだが風がビュービュー吹いて生命の危機を感じるほど寒い。この日の気温は氷点下6度だか8度程度で大したことないのだが(一応カナダ在住なのでこのくらいでは動じない)、体感温度は氷点下15度くらいに感じる。とにかくバンクーバーよりはずっと寒くて凍えそうだ。ニューヨーク=オシャレと思ってちょっと気取ったドレスばかりスーツケースに詰めてきたが、案の定外人はオシャレ無視で防寒に走っていた。明日は手持ちのものを全部重ね着することにしよう。

半端な時間に食事したのでお腹がすかず、夕飯は適当なパブでビールを飲んだだけ。まだまだおぼつかないレベルとはいえ、こういう何気ない瞬間に英語話せてよかったなーと思う。勝手にNYの人は冷たいかもと想像してたんだけど、全然そんなことなくてバンクーバーと同じくらいフレンドリー。ナンパや怪しいセールスというわけではなくて(もちろんそういう場合もあるけど)、たまたま居合わせた知らない人同士が会話するのが当たり前という感覚は日本ではちょっと味わえない。バーで、クラブで、電車で、コンビニで、エレベーターで、異なるバックグラウンドを持った人たちが共通の言語を介して出会っては離れていく。短いハローとグッバイ。無数に煌く電灯ひとつひとつに、無数の物語が宿っている。


Day2

とにかく寒いので外を出歩くだけで消耗してしまう。あまり張り切らずに昼ごろホテルを出発。地下鉄に乗ってチャイナタウンへ。


NYの地下鉄、殺風景すぎィ!狭くて暗くて汚くてネズミの巣みたい(じっさいネズミの巣も兼ねているだろう笑)。よーく思い出してみると東京もたいして変わらない気もするのだが、オリンピックのときに見栄えよく、と建設されたバンクーバーの超クリーンな地下鉄に慣れすぎたせいか最初かなり怖気づく。昔と違って今は治安は心配ないそうなのだが、それでもoff hours waiting areaとかあった。ラッシュ時間外で人が少ない時間帯はこのエリアでみんなまとまって電車待ちなさいよ、人気の少ないところで何か危険があっても知らんからねというスペースである。女子ひとりでガラガラの終電に乗るのなんか余裕すぎるバンクーバーと比べると衝撃的。東京よりよっぽど安全な街に住んで二年弱、わたし平和ボケしすぎてるな。あとNYにはバリアフリーのバの字もなかった。スペースに限りがあるから仕方がないとはいえ、エレベーターどころかエスカレーターもないし改札狭いし、段差だらけで車椅子やベビーカーの人はどうするんだろう。バンクーバーは多分法律で決まっていて、何もかもバリアフリー。

チャイナタウンには小さい土産物屋、レストランやグロサリー、魚屋がずらっと軒を連ねている。東京に行った時に街中で新鮮な魚を買えることに驚いたけど、NYもとはね。バンクーバーのスーパーにはロクな魚がなくて、魚屋も滅多になくて、市場まで行かないと買えないのできっと外人は魚に関心がないんだと思っていた。海が近いのにどうしたことだろう。

このあたりから写真を撮るのがおっくうになっている。ブロガー失格。お昼は中華粥を食べた。シーフードどっさりで美味。温まるー。酒を置いてなかったのが気になったけど、ここでビールを飲んだらまた身体が冷えてしまっていただろうから飲めなくてよかったのかも。そんなら紹興酒飲みたかったな…アルコール依存症は自覚している。まあ、若さの一部だろう。


限られた時間の中で、グラウンドゼロは絶対に訪れておきたかった場所のひとつ。昨日エンパイアステートビルから見えたひときわ個性的なビルたちは4WCと呼ばれる新貿易センタービル群だったと判明。なにしろ、前に進まなくちゃね。


旧WTC跡地はこんな風に滝のモニュメントになっている。もちろん二つ。四方に犠牲者の名前が刻印されている。奈落の底は見えず、しずかに自分の白いため息が吸い込まれていくのをぼんやり眺めていた。2001年9月11日、わたしにとっては9月12日かな。朝中学校に登校すると社会科の先生が「すごいことが起こったぞ。これはな、歴史が変わるぞ」と力説していたのを思い出す。あれから12年、いま悲劇の現場に立ってみて…何も頭に浮かんでこなかった。とりあえずシュンとしてしまった。悲しい、悲しいねえ。誰だって傷つきたくはないし傷つけたくもないはずなのに、どうしてこんなことが起こるのだ。

眉間にしわを寄せて追悼記念ミュージアムもじっくり見ていたらあっという間に夕方になった。
もう一つ、NYでどうしてもやりたかったのがロックフェラーセンターでアイススケートである。人ごみを掻き分けてこの巨大クリスマスツリーが見えてきたときは感動した。『ホーム・アローン2』や『エルフ』、いろんな映画で見たアレだ!ギンギラまぶしい!
     


並んでいる間に氷上でプロポーズがあった。大勢のギャラリーに熱烈祝福されててマジでうらやましかった…いつかわたしと結婚したがる猛者とか現れるんだろうか。いや、ありえないな。ていうか万が一何かの間違いでプロポーズされたとしたら、多分それは何かの間違いなので全力で「よく考えたほうがいい」と止めると思う。

1時間以上外で並んで、40ドルくらい払ってスケートリンクに入ったんだけど寒すぎて震えが止まらず、10分程度で退散。それでも超満足。今もスローモーションで思い出せる、夢のように美しいひととき。半透明の銀盤にツリーの光が滴ってアイスキャンディみたい。はっぴーーー!クリスマスっていいもんだなあ、と素直に思った。

いよいよ寒さが厳しくなってきたのでホテル方面に戻りつつ、途中エンパイアステートビルディングの隣にあるロティサリーチキン屋でディナー。外にBreweryと書いてあったので無意識のうちに吸い込まれていた。運動(スケート)の後のビールは美味い。ブルックリンラガーとかそんなようなのをオーダー。旅行に行った時は基本的にその地名が入ったビールを選ぶようにしている。しっとりロティサリーチキンとなめらかマッシュポテトの組み合わせ、だあいすき。楽しい、おいしい、幸せ、幸せ。こんなに幸せでいいかしら。うん、いいんだよ。幸せになることは後ろめたいことなんかじゃない。代償を支払う必要もない。


Heartland Brewery Empire State店
212-563-3433
350 5th Ave. at 34th St
営業時間 月~日 11:00-23:00

写真見てたらまたチキン×マッシュポテト食べたくなってきたのでちょっとスーパー行ってきます…そして長くなったのでこのへんで一度切って、後編に続きます。

次回予告: ホイットニー美術館でアート気分の巻、自由の女神に会って自由ばんざいの巻、そしてジョン・ウォーターズ大先生のありがたい講話を聴きに行くの巻、以上三本立てでお送りします。お楽しみに!

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