Day 3
目が覚めてブラインドを開けると、雪、雪、雪!(また写真撮り忘れ…)現在進行形でワッサワッサ降ってるので、室内レジャーにいそしむことに。Whitney Museum of American Artで現代アートに触れる。と、その前に腹が減っては戦はできぬので館内に入っているレストランで食事。美術館にあってUntitled(=無題)とはこれまたオシャレすなあ。なんだか子供多いなあと思ったら今日土曜日なのね。
212-570-3670
945 Madison Avenue at 75th Street
営業時間 水、木11:00-18:00
金 11:00-9:00
土日 10:00-18:00
定休日 月火
アメリカに来たのでバーガーを食べようとThe Untitled Burgerというのをオーダー。なぜかuntitledをultimateと読み間違える。どうやらこのお店パンに力を入れているらしくてバンズがパリっとフワっと、かつ風味豊かで美味しかった。お肉はミディアムレアで頼んだのにけっこうレアレア…まあ旨ければなんでもいいです。思わずナイフとフォークを構えたくなるようなしっとりお上品なお味で、ビールもいいけどワインも飲みたいなあと思った。美術館であんまり酔っ払うのもアレなので我慢。
公式サイトより |
メインの展示はRITUALS OF RENTED ISLAND: OBJECT THEATER, LOFT PERFORMANCE, AND THE NEW PSYCHODRAMA—MANHATTAN, 1970–1980というタイトルで、パフォーマンスアートやインスタレーションの類。よってビデオ展示が多くて全部見るのにかなり時間がかかった。で、感想はというと正直よくわかんなかったです。まあこうなるのは見る前からわかっていたのだ。たとえばわたしが何か作ってあそこに置いたらいったいどれくらいの人がペーペー素人の出鱈目作品だって気づくだろう?アート的な文脈にそれらしく置けば、空っぽのハリボテでもアートになるんだもん。(という素朴すぎる命題を、現役超人気アーティストのバンクシーが提起したドキュメンタリー『Exit Through the Gift Shop』 は傑作。あれ見てバンクシー好きになった。)「なんだかよくわかんない」という結論は見る前からわかっていたとしても、したり顔で理屈をこねてみたり、子供のように無垢な気持ちに戻ってみたり、見終わった頃には脳みそがすっかりクタクタで、やっぱり美術館っておもしろい。そうそう、街の中でもヒップなエリアというのは時代とともにどんどん移り変わるもので、地図の資料は初めてNYに来たわたしはとても興味深いものでした。2日目にひと昔は超イケてたらしいイースト・ヴィレッジというエリアを散歩したんだけど、本当に「昔はイケてたんだろうなあ」という雰囲気でウケた。今がイケてないというわけでなく、昔イケてたっぽいっていう。今はどこらへんが一番イケてるんだろう。
お手洗いは下のフロアに行かないと無いと言われ、ついでにT. J. WILCOX: IN THE AIRという作品も見た。ぐるっと円柱状のスクリーンにマンハッタンの風景が映し出されるというもの。これはどこか高いところに昇って直接見ればよいのでは?(アーティスト泣かせの身も蓋もない感想) ワークショップの子供グループが熱心にスケッチしていて微笑ましかった。わたし、本当に子供が好きだ。
雪は止むどころかますます強くなったみたい。帰りは初めてバスに乗ってみた。公共交通機関は地元の人の生活に紛れ込むようでおもしろい。NYの人は運転手に挨拶しないんだなー。バンクーバーでは乗るときに「ハロー」、降りるときに「サンキュー」と叫ぶ人が多い。わたしも必ず言う。英語圏の人は日本人よりもずっと挨拶を大切にする。
バンクーバーにしろNYにろ、ストリートはほぼ碁盤の目で東京に比べるとずっと単純なので大まかな方角がわかっていれば目的地近くまで迷わず行ける。東京にいたときはiPhoneの方位磁石なんか使ったことがなかった。
NYのバスはアナウンスがないので注意深く窓の外を見ている必要がある。サンタのコスプレの人を見かけてニヤニヤしていたら、ストリートを上がるほどにどんどんサンタ増えてきて、最終的にアジトを突き止めた。会議でもあったのだろうか。
今回の旅の主要目的であるジョン・ウォーターズ先生の講演会まで微妙な時間があいたのでホテルで休憩。緊張を紛らわすようにお化粧直しと着替え。先日自分への誕生日プレゼントに買ったジェフリー・キャンベルの15cmプラットフォームを解禁。雪が積もっているときは案外こういう靴がラク。充分時間に余裕をもって会場のクラブ、Stage48へ向かう。会場に着くとまずはIDチェック。こないだ手に入れたばかりのカナダの運転免許証をドヤ顔で見せつけ。海外ではいついかなる時でもIDを携帯しなければならない。といっても、NYで提示を求められたのはこの時一回だけだった。バーでも酒屋でも完全スルー。カナダではもう慣れて、聞かれる前に手元に準備するようにしているので拍子抜け。アメリカのほうが甘いみたい。
かなり早く着いてしまい、まだ誰もいない。緊張を紛らわすため会場内のバーでワインを煽り最前列を確保。師匠監修のクリスマスコンピ『A John Waters Christmas』が大音量で流れていて早くも半泣き。それにあわせて歌っている他のファンを見てますます泣き。
この空間には彼のファンしかいない。そのことを思うだけで胸がいっぱいになる。同じ映画を好きな仲間は世界中にいる。もしもその仲間に出会えたとしたら、名前を知らなくたって国籍が違ったって一瞬で友達になれちゃう。これが映画について好きなことのひとつ。邦題だと通じない場合があるので、普段から意識して原題(もしくは英語タイトル)をチェックするようにしている。
隣の席のオバチャンは、そのまた隣のお姉さんと母娘らしい。なんてクールな家族!ジョン・ウォーターズの作品で一番好きなのなに?と聞かれて咄嗟に『シリアル・ママ』ですと答えたら(本当は『モンド・トラッショ』が一番好き)、「well, あたしがシリアル・ママよ!」だって。かっこいい。他にもいろんな人に話しかけてもらってすごくうれしかった。わたしは就職のためでも資格試験のためでもなく、人と繋がるために外国語を勉強している。
ちなみに客層は割と若めで、さすがにエキセントリックな風貌の人が多かったです。
ちなみに客層は割と若めで、さすがにエキセントリックな風貌の人が多かったです。
そして8時、いよいよ開演。うはああああああああ本物のジョン・ウォーターズだ!最前列なので高めのステージを見上げるかたちになり、かなり神がかって見える。神がかってるっていうか、実際神なんだけどね。なんという眩しいオーラ。スポットライトのせいではなく、本人が発光していた。背筋がビシっと伸びて超かっこいい!いつもながらスーツの着こなし完璧、小物のコーディネートも素敵。コムデギャルソンかなーと思ったらやっぱりそうだったみたい。「趣味のいい悪趣味」というのは彼の根本思想だが、いくらなんでも品が良すぎる。
「こんばんわ。ジョン・ウォーターズのクリスマスの大虐殺へようこそ」と口火を切るや否や、軽やかにステップを踏みながらよどみなく喋る、喋る。あまりの興奮に気を失いそうになりながらも必死に話題に付いて行く。は、はやい…そしてマイクと口が近い…笑。聞き取れないところもあったけど、内容は著作やインタビューで予習していたものと結構かぶっていたのでだいたい理解。いちいち皮肉たっぷりで超笑った。クリスマスにもらってうれしいもの・いやなもの、クリスマスソングの話、ジャスティン・ビーバーに会った時トレードマークのヒゲを褒められた話(よっぽど嬉しかったみたい)、ヒゲを描くのはメイベリンのアイブロウペンシルでなければ絶対だめな話、来年出る新著の宣伝、あとはゲイネタが多かった印象。これはちょっと意外。昔からごく自然にカムアウトしてはいるけれど、こんなに積極的にネタにするようになったのは最近になってからのような気がする。うしろの席の男性カップルは虹色プライドT着てたし、まあゲイに人気があるんだろうな。
映画の話に出てきた名前はダグラス・サーク、ファスビンダー、ペドロ・アルモドバルあたり(だっけ?ちょっとうろ覚え)。このへんはもうお馴染みですね。ちなみにベストクリスマスムービーは『サンタが殺しにやってくる』だそう。これもファンの間では常識。自身の過去の映画やそれにまつわる思い出話にはあまり言及していなかったと思う。なんだかんだで自己ベストであろう『ピンク・フラミンゴ』と、資金不足のため製作が進まない(中止になった?)『Fruitcake』の話は少し。あ、あとFinal Destinationシリーズに出てみたいって言ってた笑。そうそうジュリアン・アサンジの話もしてたっけ。結構インターネットとかするのかなあ。質疑応答コーナーで聞けばよかった。こういうトークショーは割とよく行くんだけど、一度も質問できたことがない。手を挙げるタイミングがつかめないのだ。今回も無理だったなあ、シュン。矢継ぎ早に飛ぶ質問に一瞬のギャップもなくキレキレの答えを出してみせる頭の回転の速さには感動してしまった。身ひとつ、マイク一本で観客を惹きつけられる人は本当にすごい。
楽しい時間はあっという間。これだけで感無量なのにさらにこの後VIPチケットを持っている人はご本人に直接meet and greetできるのだ。
与えられた時間はごくわずか。とりあえず「は、ハロー…お会いできてとても光栄です」と声をかける。「来てくれてどうもありがとう。ハワユー?そんな薄着で寒くないの?」や…優しい(涙)
わたしが小さい頃から魂の拠り所としてきた聖書、『悪趣味映画作法』にサインをもらった。「これは『Shock Value』の日本語版です」と説明すると「えー日本でも出てたんだ?知らなかった」とのこと。いやいや知らなかったのかよ笑!多分知ってるけど忘れちゃったのだろう。こういう博学な人は日常の細かい記憶をどんどん捨てていくからな(わたしの大学のお師匠様がそうだった)。「そういえば東京に行ったことあるよ」これは忘れていなかったらしい。最後に来日したのは『セシル・B /シネマ・ウォーズ』の時だったはず。
「こっちおいで、一緒に写真を撮ろう」と言われ、スタッフの人にiPhoneを渡す。もう少しお話したかったけど案の定緊張で脳がショートし、もはや白目。そうこうしているうちにいわゆる「剥がし役」の人に促され神との直接対話を終えたのでした。最後にもう一度「ありがとう」と言ってくださった。ううう…泣ける…
運よくすぐにタクシーがつかまり、ホテルの隣のパブで飲んでいたら緊張の糸が切れて一気に涙がこぼれた(相変わらず意味不明なタイミングで泣く人)。わたし…本当にジョン・ウォーターズに会ったんだ、直接お話したんだ。これから先どんな困難が待ち受けていても、この思い出があれば生きていける。一生の宝物ができました。
思った以上に長くなってしまったのでここまでを中編としまして、次回後編で完結させるようにします。最後まで読んでねー!前回の投稿、お友達からはけっこう評判よくてうれひー。文章を読んでもらえること、褒めてもらうことは何よりもうれしいです。ありがとう。
【参考URL】JW先生のお話の内容をあまり覚えていなくて情けない。。。同公演をとりあげた記事を置いておきますのでご興味ある方はどうぞ。これらを訳してコアなファン向けにもうすこし詳しく書こうかなあと考えてはいます。
- NewYork Times: John Waters Offers Season’s Greeting With a Wink
- T Magazine: After Hours John Waters Has Lumps of Coal for All This Christmas
- PAPAERMAG: John Waters On His One-Man Christmas Show and The Horrors of Living Nativity Scenes
- Time Entertainment: A Christmas Conversation with John Waters
- Bedford + Bowery: 16 Things John Waters Wants For Christmas
- The Style Con: John Waters The Wicked Wise Man Of Christmas
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